箱庭のチェリー (ショコラ文庫)箱庭のチェリー (ショコラ文庫)
夏生 タミコ みずかね りょう

心交社 2013-01-10


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ボーイズラブ・レビュー

【ボーイズラブの産声を聴け! / BLデビュー作ブログ】

企画第1弾の感想です。
1月は私の捕捉範囲ではBL小説のデビュー作はこれ1冊でした。
見落としてるよ! 
という作品がありましたらぜひメールフォームtwitterのリプライから教えてください。

この作品もタレコミいただきました! ありがとうございます。

さて、ほろ苦学園ものボーイズラブです。
甘酸っぱいと言うよりはほろい感じ。
生徒×教師の下克上ラブでございます。
読んだ感触、あんまり書き慣れてない感じはなく、すっと文章が入ってくるイメージです。
そんなに癖もなく読みやすいと思います。
言われないと、これが1冊目って気付かないかもしれません。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
高校生の遠野は、近頃教師の奈月が気になっていた。それは恋ではなく、冴えなすぎる外見とおどおどした態度で舐められている奈月への憐れみに近い。ある日、級友の一人が罰ゲームで奈月に嘘の告白をする。悪ふざけと気づかず「返事は待ってほしい」と答えた奈月に級友は焦り、遠野に尻拭い役を押し付けてきた。だが相手が生徒とはいえ、人生で初めて告白されたと嬉しそうにしている奈月に本当のことが言えず――

深く考えない高校生がやらかして非常に気まずい無自覚三角関係が出来上がるという構図。
いやー、もう先生が可哀想ですよね!
罰ゲームで告白してきた生徒が実は密かに好きで、本気にしてしまうんですよ。
で、罰ゲームって知ってる攻さんは前からちょっとこの先生が気になっていて、あの告白は嘘なんですって、言えずにずるずると距離が近づいていく……。

攻さんは、先生が気になるけど、それがいつの間にか恋に変わったことにかなり長いこと気付きません。
心の中にしこりを抱えたまま、ちょっとずつ気持ちが先生に傾いていく。

罰ゲーム告白のお馬鹿さんはちょっと変形した当て馬みたいなもんです。
このお馬鹿さんも、なかなか吹っ切れない攻さんも、おまえホントに二十代後半の教師かよ!?ってくらい残念な先生も、ちょっとずつイラッとさせてくれます。
読みながらどんどん降り積もっていくモヤモヤを早く解消したくて、ページをめくる手が止まらない感じ。


もちろん最後は微妙な三角関係は無くなり、ちゃんと攻さんと先生はくっつくのですが、その後のすれ違いもちゃんと描写があって、そうよねー、学生と社会人だとだいたいそうなりますよねーとしんみりさせてくれます。
あと、珍しいことに受が教師だったこともあってか、告白→両思い→お洋服を脱いでベッドへ……という展開にはなりませんでした。
なりませんでした!
大事なので2回言いましたよ。

卒業までギシギシ肌色行為を我慢する学園ものといえば、一穂ミチさんの「雪よ林檎の香のごとく」――一穂さんのデビュー作でした――がありますが、こっちは教師攻でした。
そう……攻が生徒なのに!
いくら真面目系とはいえ、やりたい盛りの高校生に年単位の待てをさせることに成功したこの先生、実は密かにすごいやり手なんじゃないかしらって思いました。


この気まずい関係を最後にちゃんと解消してハッピーエンドに持っていけるんだから、ゲイとノンケのカップルとかも面白く読ませてくれるんじゃないかな……。
2作目が楽しみな作家さんです。

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