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天球儀の海 (Holly NOVELS)天球儀の海 (Holly NOVELS)
尾上 与一 牧

蒼竜社 2012-10-25
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ボーイズラブ・レビュー


待ってました、尾上与一さんの新刊……。
3冊目の本ですが、やられました。
もうホントどうしてくれましょう!

今日はあと3冊は読むつもりだったのに1冊ですべて持っていかれて、結局BLはこの1冊しか読みませんでした。とにかく引きずられ感と余韻が半端ない感じ。
太平洋戦争の、しかも神風特攻隊がメインで出てきます。
うちは祖父の兄が実際に特攻で亡くなっているので、昔からあれこれ聞かされていたこともあって、作中の空気の臨場感がすごかったですよ……。
休みの日にゆっくり読めて良かったです。

重苦切ない系のBL好きな人はこの下読まないでとりあえず本編を読むことをお勧めします。
これはあれよ、ネタバレ読まずに読んだ方が良い系のボーイズラブですよ!

以下ネタバレ妄想注意! ホントにネタバレしてますから……!!!


紹介文です。
命を懸けた、せつない片想い。
希は特攻に行くことを決めた。町の名家の跡取りの、1人息子である坊ちゃん、資紀の身代わりとして――。幼いころ、希は危ないところを資紀に助けられた。資紀が現れなかったら自分に命は五歳で消えていた。坊ちゃんとお国のために死ねるなんて、なんと幸せなことだろう。希は十数年ぶりに坊ちゃんと再会するが……。


神風特攻隊員の話です。
名家の長男を特攻に出さないのは外聞が悪い、でも家には男児は彼しかいない。
募集の建前なんかもう構ってられない戦況で、それでも家の血統は守りたい。
そういう事情で、希は死地に志願するために養子にもらわれることになります。
でも彼は幸せでした。
幼い頃、死ぬかもしれなかった状況で身代わりになる予定の「坊ちゃん」に助けられ、その瞬間から殆ど無自覚に、彼に恋していたのだから……。

すごいですよね……助けられて、手の甲にある黒子の逆さオリオンの話をして、トンボ玉をもらった。本当にそれだけ。
憧れと尊敬と恋心――そんな気持ちがきっと希の中では複雑に入り乱れてずっとずっと、少しずつ降り積もっていったのでしょう。
それ以降、口をきくこともなく、たまに遠目に姿を見るだけ。
それだけの相手のために身代わりを喜んで引き受け、自分の実家ではない名で死んでいくことを決める心が切なくて痛くてつらくて、でも好きな人のために命を投げ出せるある種の幸福も確かに垣間見えて、読んでいてどきどきしました。

それなのに、久々に再会した坊ちゃんの気持ちが見えません。
優しい……優しいはずなのに、とてもひどいことをされます。
唐突に身体を重ねられて、痛みに耐えて、日常でも八つ当たりにしか思えない暴力を受けて、希は混乱します。坊ちゃんを、資紀を好きで彼の代わりに特攻することを歓びと感じていたはずなのに、そう思えなくなりそうな自分に脅えます。

誰も……つーかぶっちゃけ読んでるこっちも、坊ちゃんの真意が分かりません
どう見ても希が好きだと思えたのに、中盤から後半にかけて、坊ちゃんは人が変わったようになります。お屋敷でも「坊ちゃんは変わってしまった」と眉を顰められるほど。

淡く積もった気持ちを踏みにじられて、思い出のトンボを粉々に砕かれて――
挙げ句の果てに……

坊ちゃんは、鉈で、希の右手首を切り落としてしまいます。

何が起こったのかしばらく分かんなかったよね……
理解した瞬間、マジで本閉じて深呼吸してtwitterで叫んでリアルでも1人絶叫したよね……
1人部屋で良かったよ完全に怪しい人だったよ私……

いやだってさ、手首だよ。
切ったんじゃないよ、振りかぶってダンッって切断だよ……
それまでのほんわかほんのり胸が温まる系のエピソードとか吹っ飛んだよ……
しかもさ、坊ちゃん、切り落とした希の手首を胸に抱いたまま、希が行くはずだった特攻に、当初そうなるはずだった通り行ってしまうんだよ。
どこの猟奇ホラーかって? 違うよちゃんとボーイズラブなんだよ!

ここにいたってようやく希と私は気付いたんです。
坊ちゃんはやっぱり希が好きで、絶対に死ぬって分かってる特攻になんか行かせたくなかった。
でも希はその為だけに養子にとられた。普通のやり方では絶対にその役目を外せない。
じゃあ、操縦桿を握れないようにしてしまえばいい。
自分が死んだ後も、生前のひどい仕打ちを憎しみという生きる糧にして生き延びて欲しい。
よすがとか思い出になるような、トンボ玉とかそんなものは残さない――

いやね、うん、気持ちは分かるよ坊ちゃん。
でも、でもね。

その愛情表現はあまりに迂遠すぎて、分かりにくさMAXでハードル高すぎるよ!

悟られちゃいけなかったのはわかるが、だがしかし!!!
相手の愛情に気付いたときに好いた男はこの世にいないとか。
もうこれどこのJUNEよ……マジかよ重いよ、引きずられすぎてつらいようわあああああ。
ってちょっと読むの止めて小休止とりましたマジで。

ぶっちゃけ結局、坊ちゃんは生きてて名前を変えて遠くで生活していて、最後、希は干涸らびた自分の手首と生涯想い続けると決めた男と再会してハッピーエンドなんですけどね。
これはねー、ほっとした!
正直なところ、お話としては坊ちゃんが特攻に行ってしまいました。希は、二度と会えない坊ちゃんを一生胸に抱えたまま生きていくことにしましたっていう終わりもアリだったと思います。
その方が、むしろ物語としての完成度は高かったかもしれません。
それでも、坊ちゃんが実は生きてました、再会して愛を確かめ合って2人で仲良く……っていう後日談があって、それに救われた感じも確実にあって、やっぱりこのラストで良かったなと思いました。


読後の余韻と充実感すごいです。
この手のお話のストックが後2つあるとか!
それが出せるかはこの本の売り上げにかかってるとか!!!
なにか。
某アイドルグループの推しメンを上に登らせるためにCDを大量に買うあの心理と同系統の何かか!
だってねー……重苦切ない系のBLって絶滅危惧ジャンルでね……。
でも私は大好きなんだよ……

どーかどーか、残りのお話も商業で発表されますように!
薄くて厚い本でもまったく問題ないけど!
読めればもはやなんでも良い。

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