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ボーイズラブ・レビュー
ゆっくり読みました。
新書2段打ち。
今時珍しいくらいJUNEで、でもちゃんとBLでもありました。
説明するのに難しい感覚ですけど、ボーイズラブって言葉が持ってる萌とかトキメキとかちょっとしたライトさを抱えたまま、すこし仄暗くて切迫した、切実な感情がしんしんと積もっていくような……。
大切に文章をなぞらないとと思わされたのは久々のことです。
親友のはずだった、ずっと一番の友達で、就職して結婚して子供ができても変わらず続いていく関係のはずだったのに、それは組み間違えたピースみたいにずれて、元には戻らなくなってしまいました。
以下ネタバレ妄想注意!
紹介文です。
高校の同級生で親友の蒼司に突然告白された千夏は、恋よりもずっと一緒にいられる友人であることを選び、やんわりと蒼司を拒絶する。その翌日、蒼司は学校を欠席した。心配した千夏は自宅や携帯電話に連絡を入れるが、なぜか知らない男が蒼司の電話に出る。男の言葉は異国のもので聞きとれない。不安に駆られた千夏は蒼司の家を訪ねるが、そこに彼の姿はなく―。彼らの運命を変えたラブサスペンス・ストーリー。
残酷な千夏。
友情ではない感情を諦めと共に告白されたのに、その感情を真綿で絞め殺すみたいに優しく無かったことにしようとしました。
恋人にはなれないけどずっと親友でいような。
これはつらいですよ。
「好きだった」
っていう過去形の告白が、冒頭だというのにすごい悲しくて切ない。
願いなんかないと言いながら、四国八十八か所を巡る間中、隣にいる親友との恋を願い続けた蒼司。
何事も起こらなければ、千夏への告白は千夏本人によって否定され、そのまま親友としての関係がゆるゆると続いていたことでしょう。
でも告白された翌日に、彼らから日常は消えてしまいました。
元通りの親友として過ごせるはずだった日々。
幸せになりたい、が口癖だった千夏が無意識に傲慢に胡座をかいていた当たり前の幸せが、木っ端みじんに消し飛んでしまいます。
蒼司の両親は何者かに殺され、蒼司自身は異国の男に攫われ、千夏は蒼司を解放する条件として「特殊なボルトを100本」集めるようにと条件を突きつけられました。
お隣の国の工作員が自国で作れない材料をこっそり調達しようとしたっぽいですが、それにしてはやることが派手っつーか、そんなまだるっこしいことせんで自分で探して盗んだ方が早くね? 高校生が調達できるレベルだぜ(鉄塔のボトルを拝借とはいえ)? とか、そもそもいくら通話回数が多いからって普通は友達助けるために親にも学校にも警察にも秘密で特殊なボトル集めたりしないもんだけど、工作員の鼻効き過ぎじゃね? とか、その辺はいろいろと思わないでもなかったけども、正直そんなもん些末事ですよ、ぶっちゃけどーでもいい。
蒼司を助けたい一心でボルトを集め続ける千夏。
その過程で、あんなに残酷に蒼司の恋心を殺したのに、とっくに自分も蒼司に恋してたんだと気づかされる千夏。
あんなに「幸せになりたい」って繰り返して運命の相手を求めていたのに、
「幸せになら誰とだってなれるけど、
一緒に不幸になるなら、おまえがいい」
なんて強烈な告白をかます千夏。
なんだろうね。
重くて切なくて辛いのにそれが心地良く感じるとでも言いますか。
これだけ日常から切り離されなければ、きっと千夏は蒼司への気持ちになんか気づかなかったと思うので、この事件が千夏の気持ちを無理矢理に白日に晒したと言って間違いない。
蒼司は捕まって極限まで追いつめられたけど、千夏の本当の心を手に入れたという一点においては絶対に、あのまま日常を親友として過ごすより幸せだったはずです。
幸せか不幸か……、その境界がすごく曖昧でどうとでも取れることを見せつけられた気分。
事実だけ見れば、子供が抱えるべきではなかった事件を抱え込んで大人も巻き込んで、結局真相は解明されないまま、本人達は死ぬ確率の方が高い海原にボートで飛び出すっていう、どう見てもバッドエンドよね? っていう状況なんですが、無かったことにされるはずだった恋は息を吹き返して、二度と会えないし連絡も取らないはずだった2人は同じ船の上で新天地を目指すことになったわけですから、ある意味ハッピーエンドでも良くない? という。
一番割を食ったのは間違いなく元新聞記者の若田で、彼はうっかりこの事件に関わったおかげで、本来背負い込まなくて良かったあれこれを負うことになってしまいました。
四国八十八か所の逆打ち、行くのかなー。
ちょっと痛いし血が出るしそれどころか受さんの両親は殺されて遺体放置だし重いし辛いしハッピーエンドって断言もできなくて、けっこう読む人選ぶかもしれないんですけど、私はどうしようもなくこの本が好きです。
年の頭からキたなーっていう気分。
尾上与一さん、年2冊くらい読ませてくれないかなあ……。
もう1冊目から中毒になりそうです。
↓WEB拍手です↓
アキミ
3月に新刊出されるそうなので、
今から凄い楽しみです!
このペースだと年間2冊は堅いはずです・・・!
きっと・・・!