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一穂 ミチ 青石 ももこ

幻冬舎 2011-03-15
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ボーイズラブ・レビュー


新刊が出るたびにすぐに買うのだけど、もったいなくてなかなか読めない作家さんがいて、一穂さんはまさにそのうちのひとりです。
週刊誌ばりの引きがあるような、手に取るなり貪りたくなる類の本ももちろん大好きなのですが、読みたい気分になるまで手元にずっと置いて、一番「今だ」と感じたときに読みたくなる本も格別に好き。
一穂ミチさんの作品は後者で、BLの中では随分落ち着いた作風です。

毎回、だいたい平均以上のお話で、たまにドストライク、三球三振で打ち取られた!
みたいなときがあって、今回がそれでした。
やーもう、好きすぎて困る。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
香港からの転校生・一束は、日本にも教室にもなじめずに立入禁止の旧校舎でまどろんでばかりいる。そんな一束だけの世界を破ったのが、二つ先輩の圭輔だった。まっすぐな圭輔にやがて心を許し、どうしようもなく惹かれていったのに、向けられる想いを拒んでしまった一束―十三年後、新聞社香港支局長になった圭輔と仕事相手として再会し…。

まず出会いが高校生のときです。
授業を悪びれずさぼり倒して旧校舎でタバコをふかす一束と、水泳にうちこむキラキラしたふたつ年上の先輩だった圭輔。
人間、自分にないものを持った相手に惹かれるといいますが、まさに典型といえるでしょう。
他愛のない言葉を重ねていくうちにどうしようもなく引き寄せられて、いつの間にか好きになっています。
彼らが2人きりで交わしていた会話がなんか良い感じです。
派手なきっかけとかは、なにもありません。
好きなのに、圭輔に好きだといわれたとき、身体のコンプレックスがどうしても邪魔をして拒んでしまい、それきりになってしまいます。

そして13年後に仕事で再会。
再会したときには一束は職場の上司と身体の関係が現在進行中でした。
愛してるわけじゃないし相手も結婚してますが、その辺がかえって気楽だというような。
爛れてるわけではないですけども、13年前、高校生だったときとは当たり前ですが同じではありません。
圭輔ももちろん、一束と離れている間にあれやこれやとあったわけで、時間の隔たりをものすごく感じさせられました。
舞台は香港に移りますが、ものすごく一穂さんらしい香港というか。
ものすごいエネルギッシュでごちゃごちゃしててホコリっぽくて喧しくて、貪欲に前に進もうとしている場所ってイメージが強いのに、確かにそんな空気は感じるのに、一穂さんが書くとすごいスカッと透明感のあるフィルターがかかったみたいな印象になります。
一穂作品にうまくローカライズされた香港なんです。
もう良いとか悪いとかじゃなくて、彼女の世界観ががっつりだなっていう。

引き継ぐ前の上司と、高校時代に恋した男が肉体関係にあって、自分はまだ彼のことが好きで……という、職場絡みの軽いトライアングル修羅場で泥仕合になりかねない状況だというのに、ドロドロ感はないのですねー。
毎回思うんだけどホント不思議。
最終的には高校のときの恋が13年越しに実ってめでたしめでたしってなるんですが、結構1冊にいろんな出来事が詰まってて読み応えあります。


今まで彼女の作品は全部読んでるんですが、デビュー作の雪よ林檎の〜と、オールとの雲が大好きで、この本はそれに並ぶ3作目になりました。
イラストもお話にマッチしていてステキです。

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