街の灯ひとつ (幻冬舎ルチル文庫)街の灯ひとつ (幻冬舎ルチル文庫)
一穂 ミチ 穂波 ゆきね

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ボーイズラブ・レビュー


バタバタと修羅場を駆け抜けまして、ようやく年内の仕事に片が付きました。
やれやれ。
スケジュールが押すと印刷所をはじめ関係各所に迷惑がかかるので心が痛いです……〆切、結局1日ぶっちぎってしまったしな!
敗因は23日の祝日……。無念。
今回は印刷見に行かないので、もう仕事納めまでぼちぼちデスクワークです。
もう明日からは毎日きっかり定時に退社です。
無駄残業は敵!
さっさと帰宅して溜まってる積読ボーイズラブを消化していくのです。

さて、一穂さんの新刊です。
相変わらずの安定感はさすが。
この作家さんは、読んでいて安心できる文章を書く方です。


以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
気の進まない同窓会で、記憶にない同級生と会った初鹿野柑。翌朝、酔いつぶれて正体のないままその男と一線を越えたことを知って愕然とする。「ずっと好きでした」と土下座する男は、実は、二度と会いたくなかった相手―名字も容姿も様変わりして現れた―片喰鉄之助だった。あまりの事態に「気持ち悪い」と気後れしてしまう初鹿野だが…。

世の中の男が草食系増加傾向だからってBL界にまで影響が……!
なんというヘタレ攻。
臆病・気弱なのに気持ちだけは人の十倍抱えてる、ストーカーの素質満点の攻です。
気弱なくせに、酔っぱらった高校時代の片思い相手をお持ち帰りして、ぐてんぐてんのところをおいしく頂いてしまったりもする、ちと自分をコントロールしきれていない片喰。
しかしハッと我に返ったら死ぬほど後悔するわけです。
酔っぱらった受を美味しく頂く攻はBL界に山ほどいますけれど、目覚めた受を相手にひたすら土下座して謝る攻はあんまりいないと思います。
そこまで後悔するならおめー、もうちょっと自制心を鍛えようや。

そんな感じで身体から始まった2人ですが、何となく何となく、初鹿野の方が次第にほだされていきます。
彼はとてもできる子なんですが、人間関係には淡泊で、片喰にいつの間にか惹かれていく自分に戸惑ったり。
とりあえず、素直で人間らしい男です。
たとえ自分の観察日記が積もり積もって27冊も執筆されていて、しかもそれが現在進行中でも、怒鳴って怒って、それから許してしまうんだから懐も深い。
普通そんな事されてたら、ドン引きの挙げ句100年の恋も冷めそうだけど……いや、こんなにも愛してくれて嬉しいわってなることもあるの、か? とにかく、いや片喰よそれはやりすぎだろう、と読んでるこっちはドン引きでした。
ノート27冊って、大学4年間で使ったノート全部合わせても10冊そこそこくらいの分量しかないというのに!
恐るべき熱量です。

また2人は同級生だっただけでなく、彼らの親同士が不倫関係になって両親とも離婚していたりと、微妙に絡みづらい過去も見え隠れしたり……あんまり本編には深く噛んできませんでしたが、かなりトラウマものの過去です。
設定だけ聞いてたら、もっとドロドロの愛憎劇になりそうなものですが、なぜかこの作家さんが書くと、どろっとした部分は最小限に切ない感じに仕上がるのですね。
ふしぎ!


そして、雷に打たれるという強烈な事故のせいか、漫画家なのにストーリーが降りてこず漫画が描けなくなってる片喰の問題点は、解決されないままお話が終わっています。
2人が両思いになって上手くいくことも大事だけど、こっちが気になるよ!
いつか、また描けるようになると良いなあ。


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