前回の「非実在青少年」の都条例狂奔から早数ヶ月。
新たな青少年健全育成条例改正案が発表されました。

都の青少年健全育成条例改正案全文(PDF注意)
都議会議員福士敬子のページより

都の青少年健全育成条例案を適用した条例全文(PDF注意)
@himagine_no9/ 谷分章優氏)

都の青少年健全育成条例改正案、条文が明らかに、ネット・携帯関連も修正
(前回の改正案との比較)

第156号議案「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の条文の検討
(弁護士 山口貴士氏の検討内容)

Anime and Manga More Harmful Than TV and Films According to Tokyo
都条例の『マンガ・アニメの部分』についての英語翻訳と解説
@dankanemitsu / 兼光ダニエル真氏)


実に懲りないというか学習能力がないというか。
一見、「非実在青少年」のようなキャッチーな言葉は削除され、罰則等もマイルド(?)になったように見えます。しかし、あの手この手でオブラートに包んである内容は、前回より規制適用範囲がグンと広がった強烈な代物です
そして、主張する内容は前回から変わっていません。


ボーイズラブは関係ないとか、BLなくても生きていけるし私はちゃんと自主規制、R18表記してるから関係ないもんね!
っと高をくくっていると手ひどいしっぺ返しを食らいそうです。

長くなるので畳みます。

出来れば、この問題を知った人みんなに考えてほしい。
少しでも疑問に思ったら現実に行動を起こしてほしい。
ブログやツイッターで叫ぶだけでは政治の現場に声が届きません。

請願・陳情ガイド


改正案で表現の自由、特に図書類に関わる部分を見てみます。
(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

(不健全な図書類等の指定)
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交または性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

(表示図書類の販売等の制限)
次の各号に掲げる基準に照らし、それぞれ当該各号に定める内容に該当すると認める図書類に、青少年が閲覧し、又は観覧することが適当でない旨の表示をするように努めなければならない。

一 第八条第一項第一号の東京都規則で定める基準 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 第八条第一項第二号の東京都規則で定める基準 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

●刑罰に触れる性行為と簡単に言いますが、かなり色々あります。
(参考:こんなにあるぞ! 違法な性行為
極端な話、創作に関わる人間は須く、これらの法律を熟読吟味し、理解した上で法に触れないようにモノを作れと。
恐る恐る、当たり障りのない無難なモノしか出来上がってこない気がしませんか。

●この際わざとらしい「実写を除く」は問題じゃない。
これ、読み進めたら下の方で実写についてもきっちり規制が掛かるようになってます。
ここに砲火を集中させて、この文言削ってそのまま通してしまえと言う罠のような感じ、というのはすでに各所で指摘されていましたし、私もそう思います。
実写より二次の方が悪質と言いたいのか!?
というもっともな突っ込みはほどほどに。
本質はここにはありません。

●「性交類似行為」これ、BLのことを暗に言ってるんじゃないでしょうか。もちろん、それだけじゃないでしょうけど、ここに間違いなく含まれてる気がします。
9月の東京都青少年健全育成審議会議では「青少年に与える影響としては男女より男と男のラブストーリーのほうが法律的にはよくない」「同性愛を奨励するのは法律的にどうなのか」等という、現実の同性愛者の方々にまで喧嘩をふっかけるような差別発言が飛び出しました。BL雑誌も、不健全図書指定され始めています。危険なにおいが漂ってます。

●「不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現する」不当ってなに。
この不当をいったい、誰が決めるのでしょう。
肯定的に描写、よりは対象が絞られてるように思えますが、だからといって受け入れられるかは別問題。

今更な指摘ですけど、表現内容の是非を官権や有力団体等が判断して規制することを「検閲」といいます。

現代日本において、検閲は憲法第21条第2項にて禁止されており、その憲法における「検閲」とは「行政権が、思想内容等の表現物の発表前にその内容を審査した上、不適当と認められるものの発表を禁止することを指します。憲法が定める検閲は発行前ですが、広義の検閲は発表後にも使われます。また、社会的に有力な個人・団体による規制も検閲に含まれます。
検閲 ウィキペディア


創作方面から見たら脱力ものの改悪条例です。
(たとえばtwitterで指摘されてた例。1巻で「性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張」したように見える表現があって、それが伏線になってて後半でカタルシスがあって主人公が救われて愛する人と結婚って流れの話の場合、最初でゾーニングされて最終巻だけ一般に陳列されたりするの? とか……誰がいつどの時点で不健全と判断するのか、どこで判断すればいいのか、そんなの分からないよ、書いてる本人だって最後まで決めて書いてるとは限らないんだから


そもそもちょっと待て、この条例は「青少年健全育成条例」です。
目的は表現規制ではなく、青少年の健全な育成なのです。

だから、表現の自由と青少年の育成を対立構造にしようとしている都に乗せられちゃ駄目なのです。
二次元と三次元は対立しませんし出来ません。
二次元は我々に喧嘩売ったりしません。

問題は、一番問題にして我々が気を配らねばならないのは、創作物を作成するに当たって実在青少年の人権が侵害されないかどうか。
これに尽きます。
例えば、もののわかっとらん子供を騙くらかして裸に剥いてカメラ回したりとか、そう言うのを徹底して取り締まるべきなのです。

想像や妄想の産物で、三次元と無関係のところから湧き出てきたあれやこれに注ぎ込むような無駄金は税金には一銭たりともありません。
そんなことのために、高い税金を払っているのじゃない(いや、私都民じゃないけど)。
そもそも、子供の目に触れないようにするゾーニングなら、現行条例で実行できるのです。本当に目的がゾーニングなら、改正する意味がないのです。


前も書いたような気がするけど大事なので何回でも書くよ。
必要なのは青少年から不健全とされる図書を遠ざける事ではありません。どうせ恋愛も性交渉も成長するに従って避けて通れないし、一定年齢以上の人間に避けてもらっても大変困るはずです。
そして世の中の色事は、得てしておままごとの理想のように綺麗事だけでは済みません。
そんなキビシイ現実の中に、純粋培養された青少年を突然放り出すつもりですか。
大事に健全に育てて、突然現実を見た青少年の真っ新な心が折れたらどうするんですか。

だから、教えるんですよ!
本には書いてあるけどこれはやっちゃ駄目なんだよって。
うっかり何かの弾みで18禁読んじゃっても善悪の判断ができるように教えておくの。
未成年で飲酒喫煙は禁止されてますよ、好奇心に駆られて身体投げ出しちゃ駄目ですよ、紙や画面の中の真似したら手が後ろに回るんだよって、教えるのが教育です。

知らないからやらないのと、知っててやらないのは、結果が同じでも意味が全然違います。

私は表現の自由が守られる重要性と同様に、青少年の健全な育成が重要だと考えています。
ただどうも、都の考える「健全な育成」とは考えが一致しないようで、誠に遺憾です。
科学的根拠なんか関係ないと言い放った都小Pの人とかに、あなたの考える教育とはなんぞやと問いつめたい。


表現の自由と青少年の健全な育成は両立できます。
少なくとも私は、出来ると信じています。

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