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藤田 貴美

蒼竜社 2007-02-21
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ボーイズラブ・レビュー


ううう。
木原作品はだからたまにしか読めない……。
これの感想を夜に書くとか無理。
絶対無理。
読むだけでもかなり精神力を消耗しました。

というか、夜にひとりベッドの上で読んだら確実に病んでたと思います
正月のお笑い番組をバックサウンドに読んで、なんとか心の落ち込み具合を中和した感じです。

重い・暗い・グロい・救いがないのカルテットとでも申しましょうか。
切ないとか言ってる場合じゃないです。
切ない愛の物語というには生々しすぎる気がするんですが、でもいちおう、粗筋にはそう書いてありました。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
ある日すべての建物が突然崩壊し、多くの人間や動物が死んだ。地上は灼熱の太陽と白い砂漠だけになった。地下にいて助かった幼馴染みの亮介としのぶは、食べ物がなく酷い空腹に苦しんでいた。このままでは餓えて死んでしまうと焦る亮介に、「亮ちゃんが一緒ならいい」と言うしのぶ。亮介は苛立つが怪我をした身では動けなくて…。―突如生と死に直面した高校生二人の、切ない愛の物語。

なんで世界が崩壊したのかは、最後まで謎でした。
まったくわからん。
でもなんか世界中で色々と終了したっぽい雰囲気は漂いまくってました。
なにしろラジオ放送は途絶。
中国の放送すら途中で消え失せ、時間が経ってもどこからも救援が来ず、建物は崩壊して見わたす限り砂漠のような風景が延々続いているわけです。
いや、それって北斗の拳より舞台設定非道くないですか先生?

というくらい容赦のない世界滅亡っぷりなのです。
偶然助かった高校生2人(主人と家来、みたいな関係)は、自宅のワインセラーを拠点に動いていましたが、不注意で暴漢に場所がバレ、叩き出されてしまいます。
で、彷徨っていたところを偶然通りがかった人の良い男に拾われ、地下街で生き残った十数人と暮らすことに。

そこで繰り広げられる極限に近い生活。
足を怪我して満足に動けないため、役立たずの穀潰しと見られて孤立しそうな高慢受と、大きな体と素朴な性格で地下街に馴染んでいく攻。
対照的な二人ですが、攻は受に本気で惚れています。
でも、なにしろその日の食糧にすら事欠き、残りの食糧が目減りしていく様を眺めながらの毎日では、そうそう好きだとか愛してるとか言って乳繰りあってるわけにはいきません。

そもそも受は攻のことを好きだとは思っておらず、自分の良いなりに動く便利な召使いくらいに考えているのです。
でも、冷静に考えれば、このクソ腹の立つ受は攻がいなくなったらどうにもこうにもいかなくなるわけです。たとえば水ひとつまともに汲みに行けない。用も足し辛い。しかもまともに働けず厄介者扱いされている身で、何かあれば真っ先に見捨てられる立場です。
その事実をあるとき攻に指摘され、しかも家来だと思っていた使用人の息子が、実は血が繋がった兄弟だったと知らされ、これ以上ないくらいどん底にたたき落とされます。

そんな中で起こるべくして起こった事件。
受が食糧管理係の男に「役立たずは死ね」と殺されかけ、それを助ける為に攻が食糧管理の男を殺してしまいます。
で、受は攻の精神安定のためにほとんどゴー○ンされ、話はますます泥沼へ。


そして恐ろしいことに、この泥沼にはさらに深みがあったのです
いよいよ食糧が無くなった、このままでは全員飢えて死ぬ……というところに来て、地下街メンバーは、唯一交流のあったデパ地下組のグループに合流させてもらえることになりました。
ここからが本当に地獄でした。

いやもうなんか詳しく書くのは気が重いのではしょりますが、人のイヤーな面がこれでもかというほど浮き彫りにされますし、食べ物がないからってなんか人肉を食すし、受け入れてくれた理由がひとりずつ殺して食べるためだったり、地下街メンバーのリーダーがラチられてマワされたり、犬を殺して肉食べるくらいならすでに肉になってる人間を食べるとか……。


もうダメ。
もう読めない、ページめくるの怖い、と思うのになんでか最後まで読まされるこのなんとも暗い吸引力……。
これってほんとに愛の物語なの……ううう……という感じです。
もう読み返す勇気とかないです。
というか、ボーイズラブって言えないだろ間違いなく。そんな甘い空気は皆無です。
怖い本です。

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