デコイ 迷鳥デコイ 迷鳥
英田サキ

大洋図書 2008-09-05
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ボーイズラブ・レビュー


(上巻の感想はコチラ。)

もちろん手元に届いてソッコー読了しましたが、ちょっとバタバタして感想が遅れたこの下巻。
やっぱ、これは2冊揃えてから読むべきだったなあ。

上巻で高めるだけ高めた緊張感が、やっぱり数日経つと緩んでしまうわけです。
来たぞ来たぞ来たぞ、ホレどどーんっ!!
という感じで、気分もノリも最高潮のまま一気に読み切りたかったです。

ま、なんだかんだ言いつつしっかり楽しんだんですけど。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。

「俺はお前を信じてる。
お前は俺を裏切ったりしねぇよな?」
関東侠和会の那岐には誰にも言っていない過去があった。それがある高仁会元会長の殺人犯を探す最中、過去の亡霊ともいえる男と再び顔を合わせることに・・・
一方、記憶を失っていた安見は、自分の上司と名乗る男と会い、思いがけない事実に戸惑っていた。自分には火野が必要だ。火野がいなくてはならない。
しかし、その関係は偽りのものだった!?
裏切りと真実。希望と絶望。
縺れ合う憎悪と愛情。そして絆。
男たちの想いの行方は・・・!!


ここはさすがと言うべきか、きっちり、風呂敷を畳んでくれました。
ありがたや。

冒頭で過去の事件の黒幕を撃って記憶を失っていた安見は、実は警察官だったとか割と衝撃的なあれこれがぽろぽろと露見していきます。
プロの殺し屋なんつー、ホントに現代日本にこんなのいるの?という職に就いていた、派手に歪んでる攻の過去とかもきっちり明らかに。

まぁそりゃね、物心つく前に捨てられて最底辺の生活を強いられた挙げ句、さらに売り飛ばされて腹の出たオッサンの慰みものにされ、しかもそこから助け出して養ってくれたのが立派な暗殺者とくれば、倫理観のごっそり欠落した人格崩壊男に成長するのも無理はありません。それが良いか悪いかはまた別の話ですが。


上下巻できれいにまとまっていたこの作品、ヤクザものでハードボイルドっぽくて、しかもお得な2カップル入りの、なかなか素敵なボーイズラブだったわけですが、ちょっとこれまでの英田作品とは違ったように思います。
なんだろう、堅気じゃない男たちがメインになって社会の裏舞台を駆け巡るというのは共通してるんですが、終わり方がちょっと違うんですよね。

エスにしてもDEADLOCKにしても、裏の世界だけど二人の未来は明るい方に向かって開けてるよね! という健全な方向に話は進むのです。

しかしこの作品に関しては逆です。
堕ちるところまで堕ちてやるよ、こういう生き方を選んだんだからな。
という感じで、暗い方の道を自分たちで選んでズンズン進んでいくんです。

グラデーションで言うなら、前者は黒→白なんですが、後者はグレー→黒なのです。

やっべ、なんか記憶ないけど人のこと撃っちゃったよ、どーしよ→ヤッちゃったし火野と離れられないし、どーせ警察官に復帰とか不可能だし→辞めちまえ、そして二人で海外に高飛びだぜ!

というカップルと、

うっわー、そんなつもりないのに無差別殺人の片棒担がされちゃったわ、俺って人殺しじゃん、でもプロとか無理だし一抜けた!→でも堅気にはなれずヤクザの密偵兼特攻隊長に。そして相棒に片想いされるも受け入れきれず長期おあずけ→過去に関わった男たちと再会し、このままじゃ前に進めないわ、けじめ付けよう→自分に片棒担がせた黒幕を探り出して殺害
というカップル。


幸せって人それぞれだよね、という感想が思わず零れるダークな余韻をくれたお話だったのでした。

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