日出処の天子 (第1巻) (白泉社文庫) 山岸 凉子 関連商品 日出処の天子 (第2巻) (白泉社文庫) 日出処の天子 (第3巻) (白泉社文庫) 日出処の天子 (第4巻) (白泉社文庫) 日出処の天子 (第5巻) (白泉社文庫) 日出処の天子 (第6巻) (白泉社文庫) 日出処の天子 (第7巻) (白泉社文庫) by G-Tools |
ボーイズラブ・レビュー
忘れられないボーイズラブに名前を挙げていただいたこの作品。
文庫で全7巻。
いやもう、圧巻。
読んで良かった、つーかこれまで読んでなかった自分に愕然。
読了後はしばらく他の本に手を出す気になれないほど、頭の中が魔性の美貌を持つ聖徳太子でいっぱいでした。
出てくる老若男女の誰よりも美しく禍々しく描かれる聖徳太子。
それでいて史実には忠実なのです。
作品を読み進めながら高校時代の参考書を引っ張りだして、一所懸命に毛人の名前を探してしまいました。
歴史上では影が薄い毛人ですが、この彼こそが聖徳太子の思い人なのです。
以下ネタバレ妄想注意!
聖徳太子。
歴史上に数々の伝説を残す、革新的な政策を推し進めた賢明な為政者……というくらいの認識だったというのに、この作品の聖徳太子ときたら!
頭の切れる超絶美形で、母親に愛されなかったトラウマを持つアダルトチルドレンで、かつ同性愛者にして蘇我氏の継嗣に恋心を抱く、ホラーチックな超能力と不安定な精神を持った魔性の襲い受! なのです。
もうこの太子のキャラが強烈で。
政変が起こる裏には必ずこの男がいて、彼の思う通りに事が運んでいきます。
太子の心を揺るがせる罪な鈍感男・毛人も、いつの間にか渦中の人に。
毛人は、太子を女と見間違えてうっかり一目惚れてしまうわけですが、男と知ってからは頑なに太子に傾いていく心に蓋をします。
太子は基本、襲い&誘い受でときどきツンデレ、そしてまれに健気受とまさに変化自在の魅力を放ち、毛人を絡めとっていきます。
そして。
太子が初めて結婚する日、つまり花嫁との初夜に。
霊体になって毛人の寝所に押しかけ魂レベルで合体。
花嫁をおいしく頂く前に自分のバックバージンとさよならしてました。
寝込みを(夢の中で)襲われた毛人も哀れというか情けないですが、ちょっと素直に嫁さんが可哀想だなぁと思ってしまいます。
彼女は彼女で、太子が好きなのに。彼の性的指向がホモであったために、この作品中では子どもを授かることができません。
方法はともかく、ひたすらに一途な聖徳太子。
毛人が惚れた女を大王に差し出して手出しできないようにしてしまったり、もっと直截にざっくりあの世に送ろうとしてみたりと自己中かつ過激なことを色々とやらかすのですが、最終的に毛人は太子のものになりませんでした。
十年に渡って様々なことを共にやり遂げ、誰よりも近くにいて心を分かち合った相手ではありましたが、道は分かれ、二度と交わることはなかったのです。
最終巻に太子が抱えた孤独の深さは凄まじいものがありました。
この作品の聖徳太子は、絶望と虚無と完治することのない傷を身の内に抱えたまま、何とか息をする為に国という大物を動かして行くんだろうなぁと。
とにかく切ない。
ハッピーエンドじゃない。
でもたぶん、絶対忘れられない作品だろうなぁと思います。
↓WEB拍手です↓
アキミ
この作品を読み返すととにかく毛人に腹が立って腹が立って…(怒)。
ラストの池畔での決別シーンは、「どうしてそこで引き返して王子を抱きしめてやらないんだよ毛人ぃぃ!」と必ず叫んでしまいます。
もちろん毛人のことも好きなんですが。だからこそなぜ素直に王子を愛さないのか、なぜ王子をあれほどの孤独の中に見捨てて去っていくのかと、歯がゆくてたまらないのです。
本当に、誰一人として幸せにならない完全なバッドエンドですよね…。私は王子と並んであまりに刀自古が哀れだと思いました。
今までもずっとそうやって生きてきたのだ。耐えられぬはずはない…と絶望の中一人歩む決意をする最後の王子があまりに悲しくて。一生忘れられません。
絵で敬遠している人は勿体無いので、絶対に読んでみてほしい作品です。