ええ、私の好奇心の犠牲になった弟が、昨日、やさしい竜の殺し方を無事読破しました。

そして、今月の小遣い(彼の小遣いは毎月私から支給される)を盾に、しっかり感想ももぎ取ってきました。

まぁなんというか、読み切ってくれるかどうかがそもそも分からなかったので、無事乗り切れて良かったと思っています。


とっかかりで若干つまずき気味だった弟。
貸した3日後くらいに今どのへん読んでるのと訊いてみたら、

「武術会が終わったとこ」

と抜かしやがりました。
(未読の方へ、冒頭数ページ目くらいの場面です)

これから面白くなるからとっとと読め、と発破をかけ、2日後くらい。
弟が自主的に報告をくれました。

「なかなか面白いわあれ」

そーかそーか、それは良かった。

「普通、俺、小説って一回読むの止めたらなかなか次に進まへんねんけど、これはちゃんとすぐ読もうって思うねん」

……そりゃようござんした。


このまま行ったらさっくり全部読んでくれるかも。
と安心していたら、しばらくしてまた弟が途中経過を報告にやってきました。

「なぁ、ねーちゃん。」

なんだね。

「これ、ちょっと怪しい本なんちゃう?

な、なにがよ。(あ。やべぇ、やっぱちょっと引っかかりました?)

「なにがって、なんかちょっと」

……。
ここで疑われるわけにはいきません。
私は全力でとぼけました。
心底不思議そうな顔を作り、

「怪しくないよ。普通のファンタジーやもん。
 なんかおかしなとこでもあったん?」

「いや……って、内容覚えてないん?」

「だいぶ前に読んだっきりやしなぁ。細かいとこ忘れたわ」

閻魔さんゴメン。
このあと善行積むから、ここんとこはちょっと目ぇつむっといて。

「ふーん。考え過ぎか……」

「そうちゃう? つーか何処でひっかかったんよ」

「な、なんか男同士の愛情? っていうか
ドラゴンが男を口説いてた

……………。やっぱそこか

「ドラゴンやし別にいいんちゃう?」

「でも男に向かって運命の恋人とか……ねーちゃん、ホモ読み過ぎて感覚狂ってんちゃうん」

や、やべぇ、ここは強気で押し切らないと。

「んなことないよ!
そこんとこ、イニシエノケイヤクってフリガナ振って読み進めとけ!」

「わ、わかった」


ということで何とか乗り切ったと思いきや、横から妹が、

「えーなになに、こいつに何貸したん」

と首を突っ込んできます。
そして、タイトルを確認するや、

「ついに貸したんや、へー」

と、ニヤニヤ笑いながら余計なことを!!
せっかくごまかしてるのに疑いを深めるようなこといいやがって。
と思いつつ、またもやごまかしモード全開で対応する羽目に。

「そろそろ新書2段打ちのぶ厚めの本も読めるようになってもらおうと思って
少年が好きそうなRPG風のファンタジーをチョイスしたんよ」

ヤバイぞ私。なんか台詞が説明口調だ……。
でもここが踏ん張りどころ。
妹に説明する振りで舌を回転させつつ、目線で黙っていろと釘を刺します。

「なぁねーちゃん、ほんまにこれ普通の本?」

「うん、間違いなく普通のファンタジーやで

少なくとも本番はない。
心の中で付け加えて、何とかその場を乗り切りました。


で、何とか全部読んでくれたわけです。
ふぅ。
弟の感想は、なかなか新鮮でした。

「面白かったけど、アーカンジェルは時々性格変わるな」

「最初、ちょっとナシアスみたいやと思ったけど全然違ったわ」
(※ナシアス:「デルフィニア戦記」というファンタジー小説に出てくる美形剣士。どちらかというと冷静な、現場のブレーキ役)

「ナシアスはずっと冷静やけど、アーカンジェルは時々発狂したみたいになるしな。
なんかヒステリーみたいやん」

うっわー、トラウマ持ちの美形青年をばっさり切り捨てやがった。
ちなみに、誰が一番好きだった? と訊いてみたところ、

「うううーん……特にない、かなぁ」

強いて言うなら! と突っ込んでみたら、

「まず、ガイスはなくて……女の子(パーティ唯一の女の子)も消えて……ドウマも……うーん、ないなぁ。主役の二人かな」

めっちゃ消去法やん!!

「あえていうならドラゴン。格好いいから

……そーかそーか。
オスなのに男に向かって愛してると連発してても格好いいのか
というか、おまえ男のクセに2番目に女の子消したな!
しかもウランボルグというドラゴンの固有名詞を覚えていない。
まぁ、耳慣れない並びの音ではあるけれども。

「それでなぁ、ドラゴンはあそこで死ぬべきやったと思うねん

ええと。
そ、それはちょっと。
(基本設定では、人間界にやってきたドラゴンは、世界の均衡を保つ為に死ぬことになってるのです。しかし、愛の力とアークの土壇場やけくそな博打的行動によって乗り越えて、無事生還、ドラゴンのオスと人間の男は変わらぬ愛を誓い――というラスト)

たぶんあそこでドラゴン殺したら、本として世に出てこなかったでしょう。
なんのカタルシスもなくしかも悲劇で終わるファンタジーとか、そんな一般受けしそうにないものにGO出す編集はあんまりいないはず……。

「で、後2冊続きがあるんやけど、読む?」

「読む」

即答していたし、気には入ったらしい。
でも、基本キャラ萌は無かった模様です。
うーん。腐男子候補生としては落第かもしらん

そーいえばそうだよ。
デルフィニア戦記の時も、デル→スカーレット・ウィザードまでは催促して借りて読んでいってたけど、暁の天使シリーズになったらそれほど執着しなくなって途中で貸してっていいに来なくなったしなぁ。
(※暁の天使シリーズ:前作と同じキャラが出演するキャラ萌度が高いシリーズになっている)


今後の教育方針を慎重に検討する必要がありそうです。
(いや、真面目な話、ちゃんと活字の本も読める子に育ってくれたらそれで良いんですけど)

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