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妓楼の戀水妓楼の戀水
橘 紅緒

大洋図書 2007-03
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ボーイズラブ・レビュー


体温計は直視できるようになりましたが、なんか足元がふらつきます。
薬の副作用かしら……。

さて橘紅緒さんの新刊。
表紙がまともだ。というか受の節が女にしか見えない。
これ、レーベルが違ったらボーイズラブって判断できないですよー。
でもありがたいことに本屋さんでは手に取りやすいです。
間違えて買った人は何というか、ご愁傷様ですとしか。

この作品は、雰囲気作りに気を遣ってます。
イラストも抑えめで、項は漢数字を使ってます。


しかしこれは……どーなんでしょう……。
ボーイズラブとして楽しめたかどうかは微妙なところ。
いや、楽しかったんですけど。肌色シーンとかは。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。

男でありながら遊女顔負けの美しい容姿を持つ節。
郭で生まれ育った節にとって、人の情などその日によって変わるもので、 戀など現の世迷いごとのようなものであった。
そんなある日、東和財閥の御曹司、東和柾臣が浮雲花魁の客として遊廓を訪れた。
遊廓をしらず、礼儀正しく振舞う柾臣の優しさに触れ、節は生まれて初めて知る 感情に戸惑い、傷つきながらも、どうしようもなく戀に囚われて・・・


身請けされる時に花魁に産み捨てられた節は、楼主に偏愛されながら妓楼で育ちます。
で、客としてやって来た財閥の御曹司である柾臣に一目惚れ。
でも柾臣は、どうやら妓楼NO.1の浮雲にご執心なご様子。
ああ悲しい。これは悲恋の予感……と思いきや。

浮雲は、没落した伯爵家から売られてきた子だったのです。
柾臣は没落前の伯爵家と交流があり、ようやく彼女の所在をつきとめたのでこの境遇から救い出そうと下心ナシにやって来たのでありました。
そして実は惚れていたのは節でした

というオチが付きました。
浮雲姐さんは、同情なんかいらねーよっ! 惚れた男連れてさっさと消えな!
とばかりに漢らしく柾臣を袖にします。
格好いいです姐さん!

そして、「息子さんを僕に下さい」と楼主に申し出た柾臣。
同席したのは楼主と、その補佐の菊代と、当事者の節。
ここから先がもう傑作でして。

「だ、だ、大体、なな、なんや、その、首の痕は……!」

と、楼主が首のキスマークに怒りを爆発させれば、

僕が吸いました
柾臣が清潔な顔で告白する。

いやぁ、御曹司、やりますなぁ。
で、その後の会話が、

「よくも、よくもまぁ……! 
 儂が手塩にかけてきた子うを、傷物にしよって……っ!」

「ですから、責任はきちんととらせていただきたいと申しあげているのです。
 どうか、落ち着いてお話をさせていただきたい」

「これが落ち着いてなどおれるかっ」


どー見ても、結婚申し込みにきたぼんぼんと、娘可愛さのあまり正気を手放しかけてる頑固オヤジです

この場をおさめたのは、実は節の生みの親だった楼主の補佐というか妓楼の女将をしている菊代さんでした。
この人もまた格好良くて。

「じゃかあしぃんじゃ!」
関西人ゆえ、イントネーションまで完璧に脳内で再生される。

と楼主を怒鳴りつけたあとは、柾臣とさっさと話を進めていかれます。
そしてめでたしめでたし……。



って、あのな。
女性陣ばっかに目がいってしもて、肝心のボーイズラブ要素の影が薄いわっ!
しっとりしんなり、良い雰囲気で全編統一されてて良い感じではあるのですが、男どもの不甲斐ないことときたら。
もっとしっかりせぇや! と発破のひとつも掛けたくなります。
同じ男でも、遊び人の葛城のほうがよっぽど目立っていたような。

あ、でもラストの肌色シーンは色っぽくて素敵でした。
柾臣の存在価値を、遅まきながら私はここで認めました。
床上手の攻はそれだけで全て許される……ような気もします。

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