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邪道 濮上之音邪道 濮上之音
川原 つばさ 沖 麻実也

講談社 2005-12-28
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ボーイズラブ・レビュー


着々と新書に追いついてきている邪道文庫バージョンです。
2005年最後に読んだボーイズラブ小説になりました。
とりあえず感想にはいる前に突っ込ませて頂きましょう。

アシュレイに絡んでる青白いそこの魔族、おまえいったい誰やねん!

今回はじめてイラストで登場した彼、今後ストーリー展開上かなり重要な魔族なのですが、まさかこんな顔しているとは思っておりませんでした。
私の彼のイメージは、今回のイラストにもあった水の蛇だったもので。
きっとヒトガタになってもハリー○ッターのスリ○リン系の顔なんだろうなと勝手に思いこんでいたのですよ。それがなんだ、いい男じゃないですか。

この巻をターニングポイントに、物語は大きく動き始めます。
新書の時より伏線がはっきり張られていてドキドキでした。
先は分かっているのにそろそろ読み進めるのが怖くなりはじめてます。


以下ネタバレ妄想注意!



まず番外編の色が濃かった真昼之月です。

冬の日の幻想に続いてまた世界史ですよ。
あう……。
私の脳内世界史図はほとんど白紙なんです。
白紙でも問題なく楽しめるのですが、きっと知ってたらもっと楽しいんだろうなぁと思うとちょっと歯がゆかったり。

メインにアシュレイに関わってきたのはセシリアという女性です。
アシュレイが彼女の母親に誤っ聖水を飲ませてしまったため、特殊な体質に生まれついてしまったセシリア。
守天が作り出す聖水の影響を胎内でうけた子供は両性具有として生まれ、その血液は生涯聖水と同じ働きをするのです。そんなことがばれたら、権力者に骨の髄まで利用し尽くされる上、下手をすれば歴史を変えてしまいかねません。
この失態を償うため、アシュレイはセシリアが生涯を終えるまで傍で守護することになります。

守護守天としてずっと人間を見てきたティアと違って、アシュレイには人間と関わることについての耐性がありません。直に接触してもろに相手の感情の影響を受け、悲しんだり苦しんだりします。
そして後先考えずにその場のノリと勢いで厄介ごとを天主塔に持ち込んでは桂花に睨まれます。でもティアも柢王もアシュレイには甘いですからね……1人くらいは強烈なことをズバリ言ってくれる人がいたほうが良いかも知れません。
なんて素敵なバランスの飴と鞭。

なにしろ南領の継嗣のくせに直情型なのです。
優しくて真っ直ぐ過ぎるのでしょっちゅう何かにぶつかっては痛い目に遭っています。
この子を育てるのはさぞ大変だっただろうなぁと南の教育係に同情します。
私なら確実にグーで殴ってますよ。教育的指導。
でも実際は文字を通して眺めるだけで済んでいるので、硬くて脆いガラスみたいな子だなぁと思いつつ成長を見守っています。
(ちなみに柢王は私の中では鉄です。機械構造用炭素鋼。硬いのは硬いですが、ガラスよりは柔く柔軟性があります)

この話にも、邪道のラスボス的存在の冥界教主が出てきます。この先の展開を知っている身としては冷静にこの男のことを語る自信はないのですが……。彼が最終的に何をどうしたいのかが未だに見えてこないのでかなり不気味な存在であることは確かです。
なんか耳(?)も8個ついてるし。
蜘蛛かよあんたはと(蜘蛛に8つあるのはは足と目ですが)。
無念な思いのまま死んだ魂を慰めるのが本来の仕事なら、もっとしっかり慰めてやってくれよとは思います。慰めるどころか彼に駒として使われている水城も氷暉も可哀想かも知れないですね。生前の無念を利用されている形になるわけですし。
冥界教主の前に浮かんだ人々って、執着がなくなれば無事昇天できたんでしたっけ。
長いこと新書も読み返してないのでどうも記憶が曖昧です。

そろそろ話に不穏な空気が混じりはじめています。
これから、怒濤の展開なんですよね……。
精神的体力勝負は近いです。


濮上之音

こちらの話はわりと新書版に沿った形で展開されています。
いよいよ冥界教主が守天であるティアにちょっかいをかけ始めるのです。
人間の村に魔族を放ち、全滅させかけてアシュレイをティアに泣きつかせてしまいます。

どこまでも恋人に弱いティアは、アシュレイに泣かれると己の立場を横に置いてでも駆けつけて手を差しのべます。
この時も、人間の小さな集落ひとつのために至高の身体を無防備に敵の前に曝すという失態を犯しました。結局、助けたはずの集落はボロボロ、ティアを守るために戦ったアシュレイも、魔族に取り憑かれてしまいました。
ここでアシュレイに取り憑いた魔族こそ、表紙に華麗の初登場した氷暉です。
蛇さんです。
これからアシュレイとティアは長いこと、氷暉との関係で悩むことになります。

また、柢王の額にも魔族が憑いています。
この魔族も、柢王の体内で暴れはじめています。
こっちの魔族はえらく凶暴で、柢王が弱った時には意識ごと乗っ取られてしまいます。身体を奪われた柢王は、不本意極まりないことに恋人であるはずの桂花を強姦する羽目に。
柢王が大切で、どうしても離れられない桂花がいじらしくて泣けます。
とりあえず、この異種間恋愛やってる2人にはどうあっても幸せになってもらわないと私の心の平穏が……。


それにしても天界の王族が二人揃って魔族憑きとは。
ちなみに魔族を身体に入れた天界人の基本処置は処刑です

うううーん。
これからの修羅場を予感させるような1冊でした。
このシリーズとはかなり長いつきあいですが、最後の落としどころがまったく読めません。 4人とも幸せになって欲しいなぁと切望しながら待っているのですが、はてさてどうなることやら。


新書の2部下巻は、今年中に出すことが目標だそうです。
もうここまで来たらどこまでも待つぞと言う気分です。
いよいよ発行となったら腹をくくって新書版を1から復習することにします。

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