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4813011063世界の果てで待っていて ~天使の傷痕~
高遠 琉加 雪舟薫

大洋図書 2005-09-10
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ボーイズラブ・レビュー


高遠さんの新刊です。
といってもえらく感想が遅くなってますが……。

今回の話は、探偵×刑事ということでしたが、最近読んだ刑事さんや探偵さんが出てくる中でもかなり上位にランクインしてきました。
私の中での高遠さんの作品というのは、ちょっと痛いけれど基本的には甘くてほのぼのという感じの位置づけになっているのですが、今回はちょっと違いました。

雰囲気でいえばどこか硬質。
甘いというよりは切なく、仄暗い影を思わせる印象でした。


以下ネタバレ妄想注意!






紹介文です。


元刑事の黒澤銃一郎は、渋谷に調査探偵事務所を構えている。ある雨の日、美少年・奏がやってきた。行方不明の双子の兄・律を探してくれ、と。一度は依頼を断った黒澤だが、かつての同僚で現役の刑事である櫂谷雪人もある事件の関係で律を探しており、ふたりは協力することになる。静と動。理性と本能。好対照な幸人と銃一郎が刑事をやめてからも続いていた。甘い一夜の記憶を忘れたふりをして・・・!?


黒澤と雪人の視点がポンポン入れ替わるので、注意して読まないとちょっとこんがらがりますが、すぐ慣れました。これは、お互いがお互いをどう思っているかというのがとても重要な話だったで、二人の視点で話が進むのは仕方ないんだと思います。

探偵と依頼人の間に共通していたのは血の絆でした。
自分の兄弟を大事に思い、守ったり、その意思を優先させてやりたいと思っているのです。二年前に、強盗に妹を殺された黒澤は、その時に目に負った傷のため刑事を辞職し探偵になっており、依頼人はその黒澤に、兄を捜してくれといいます。

黒澤が妹に向ける気持ちと、雪人が黒澤兄妹に向けた気持ちと、依頼人の兄に向けた気持ち。この3つの感情が重なってこの物語は構成されています。
そして、脇を固めるように、依頼人の兄がまったくの他人であった、もうすぐ癌で死ぬ男に向ける思いがありました。みんな、自分の場所を探して歩いているのです。


そして、黒澤と雪人の恋愛は、ストイックと言うよりは臆病。
気持ちを伝えて、この今の心地良い関係がこわれるのが怖い。
互いがそう思っている恋がまともに前進するはずがありません。
ただ、触れるか触れないかの距離、実は両想いだけどその先に進まない……。
というシチュエーション自体は、かなり好みです。萌えます。
結局、黒澤の妹の死をきっかけに一夜かぎりの関係を結びますが、二人の間ではそれはなかったことになっています。あれは、現実世界に這い上がってまた歩くための儀式のような行為であって、恋愛感情からではなかったという認識のようです。

いつか君自身の心が、君を裏切る

ラスト近くに出てきた黒澤の言葉が重いです。

この先、二人は、どうやって近付いていくのでしょうか。
黒澤はまだ妹を殺した犯人を諦めていません。
彼の中で、まだ事件は終わっておらず、これに決着がつかない限りはあの一夜が忘れられずに、雪人との間に健全な関係を築くことは難しいと思います。
犯人を見つけた時、黒澤が未来より過去を重いと思っていたら、もう何をするか分かりません。その時のブレーキに、果たして雪人はなれるでしょうか。
この作品の救いがどこにあるのか、気になります。
彼らがそれを見つけられることを祈りたいです。
二人が這い上がってまた未来を見ることができるようになるといいのですが。
大事に続きを書いて、キャラを育てていって欲しいなと思える作品でした。

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