彩雲の城 (Holly NOVELS)彩雲の城 (Holly NOVELS)
尾上 与一 牧

蒼竜社 2014-11-14


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ボーイズラブ・レビュー


ちょっとかなり出遅れたけど読んだぞ!!!
同一世界観の別カプシリーズ3冊目です。
(1冊目は「天球儀の海」 2冊目は「碧のかたみ」)
本作は2冊目と同じ、大戦時の最前線、ラバウルが舞台です。
前のメインカプもちょこっと出てきて楽しいです。

ドシリアスのボーイズラブです。
まあ設定が、BLにはレアな歴史上実在した戦のまっただ中、しかも場所が最前線ですから、まあギャグにはなりませんよね……。

相変わらず人のストライクゾーンを直撃するのが得意な作家さんですよ。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
太平洋戦争中期。婚約者に逃げられた谷藤十郎は、外聞から逃れるように志願したラバウル基地で、高速爆撃機・彗星と共に着任してきた優秀で美しい男、偵察員の緒方伊魚とペアになる。伊魚は他人を避け、ペアである藤十郎とも必要最低限しか話さない。他にペアに欲しいと画策していた男がいた藤十郎だったが、冷たいようで生真面目で優しい男を嫌いにはなれなかった。それに、時折伊魚が起こす呼吸困難の発作も気がかりだ。そんな中、不調が続く彗星は偵察機への転用を命じられる。積乱雲湧く空を駆ける彗星ペアの運命は―。

飛行機乗りのペアがカップルになります。
戦場におけるペア――相棒がそのままカップルになるという、いわば王道です。
だがそこがいい!

婚約者に逃げられた藤十郎(攻)と、結婚するからと軍の上官に捨てられた挙げ句に、最前線に飛行機とセットで左遷されてきた伊魚(受)がくっつきます。
望んで組んだペアではありませんでしたが、それでも背中を預けて戦うお互いの唯一になっていきます。
伊魚のツンツンツンデレな感じがもう可愛くて可愛くて。
モールスでペアの名前を呼ぶ練習をしたりとか、正面から好きって言えないけど内心ではとっくに好きになってるって見てて分かるところとか、もうたまらん。

藤十郎はけっこう我慢強く伊魚を落としにかかったものです。
少年みたいな真っ直ぐさと頑固さを面影に残していて、ちょっと不器用だけど情の深い攻様です。
人を寄せ付けなかった伊魚と、誰も近寄りたがらない繊細で壊れやすい航空機をまとめて抱え込んだのだから、なかなか器のでかい男なのだと思います。

死が日常に近いところにある生活の中で、好いた相手との未来を考えるのはたぶん思ったより大変なことで、一緒に逝くことを予想する方が容易いような狂った状況です。
出撃する度にもう還れない覚悟をしながら日々を過ごして、最後まで生にしがみついて……
最後は無人島でサバイバルしてました。
死んだと思われてましたが、彼らはしぶとく生き残りました。


いやほんとね?
戦争ものって、いかにハッピーエンドメインのBLジャンルであっても、死ネタが頭をちらつくわけです。
個人的にそういう終わり方もアリだと思いつつ、読みながらドキドキします。
で、飛んでる最中に敵を振り切ったと思ったら発動機が止まりました、航空機が墜落します、敵地のど真ん中です、下は海です……とか、もう死亡フラグが乱立したんですよ。
もう、こうなったらどれだけ綺麗にこのカップルに三途の川を渡らせるんだろうって覚悟でページをめくるしかない状況です。

それがです。
海になんとか不時着しました……からの、近くの島まで遠泳、上陸です。
で。
無人島でサバイバル。
こいつら、5メートルクラスの鰐を捕まえて食ってましたよ逞しすぎる。
もうね、えっ、えっ……ってなってるうちに、筏組んで海にでて、嵐の中現地民に運良く拾われて、藤十郎なんかマラリアにかかってたのに、紆余曲折しまくって国に帰ってました。

なんという豪腕ハッピーエンドでしょう!
(褒めてます)


ほんとに!
呪い人形みたいな仏像を彫ったり、下手くそな俳句を詠んだりしながら、おじいちゃんになって雲の城に引っ越すまで、2人でのんびり暮らせばいいと思います!

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