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碧のかたみ (Holly NOVELS)碧のかたみ (Holly NOVELS)
尾上 与一 牧

蒼竜社 2013-08-08


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ボーイズラブ・レビュー


暑い季節が終わる前に、絶対感想書きたかったのですこのお話。
天球儀の海もすっっごく良かったのですが、そのリンク作です。
戦時中の最前線ラバウル、そこで戦う飛行機乗りが主役のボーイズラブです。
(検索で迷い込んできた方へ。この作品は男同士の恋愛を主眼に置いたお話です)

もうね、尾上与一さん好きすぎてやばい……
前作では名前しか出てこなかった恒(わたる)が主役張ってます。
彼は受なんですけどすごく格好いいんですよ。
このお話を読む前に「風立ちぬ」を見てきて、それが零戦を作った男のお話だったので、そこもぐっときました。
彼が作った飛行機に乗ってる男の話!! という方面でも勝手に滾っておりました。

脳内でフィクションのお話を勝手にリンクさせて遊ぶの大好きです、ふふふ。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
昭和十八年。全盛を誇る南の要塞・ラバウル航空隊に着任した六郎は、喧嘩に明け暮れている戦闘機乗り・琴平恒に出会う。問題児だが操縦士として優秀な恒と「夜間戦闘機・月光」でペアを組むことになった六郎は、行動を共にするうちに、故郷の家族を守りたいという彼の深い思いと純粋さに触れ恒に強く惹かれていく。命の危険と隣り合わせの日々が続く中、二人は互いを大切なペアとしていとしく思うように。しかし、ラバウルにも敗戦の足音は確実に近づいていた…。「天球儀の海」希の兄・恒と六郎の命を懸けた青春の日々。

ただ飛行機に乗ること、空を飛ぶことを愛し、空で戦うことで本土の家族を……弟を守りたいと願って前線に立つ琴平恒。
真っ直ぐな性格で、折れるということを知らないこの男が、本当に愛おしかったです。
そして、彼に寄り添い続け、恋して、肩を並べて最後まで戦った六郎も。

本当に、萌だけで語れる舞台や設定ではないのですけども、それでも萌えました。
シリアスな空気も損ねず、かといって重くもなりすぎない絶妙なバランス感覚。
すごいです、ほんとうに。
文字通り命懸けの最前線で、人間の性格ごと歪んでしまうような環境で、それでも真っ直ぐ踏ん張り続けるのがどれだけすごいことなのか想像しかできないけど、しっかり想像させてもらえる行間が確かにあります。

星を宿した黒い瞳に、吸いよせられるように惹かれていった六郎。
はじめは野生動物のように新しい相棒を警戒していたのに、徐々に心を開いていく恒。
吊り橋効果なんかじゃない、戦場で背中を預けて戦う相棒に対する信頼と、好き合う心がちゃんとあるのですね。
手作りの線香花火をあげながら将来の話をするところとか、キュンってなります。

命ギリギリの環境で絆を深めていく……ここでしかできない恋だったし、繋がらない縁だったんだとねじ伏せられた気分です。もちろん喜んではいつくばりました。
どんどん戦況が悪化して、基地の状況も悪くなる中、ラストはどうなることかと本気で心臓が痛かったですが、どうやら破裂させずに済みました。
なにしろ特攻なので、あっちこっちに死亡フラグが乱立しまくってまして、久々に本気でBLカップルの生死を心配していたのです。
(基本、ボーイズラブでは本気の生き死にはない……死ネタはタブーってことになってる、いちおう!)

この本、きっと何回も読み返すと思う。

あと、本筋とはちょっとそれますが、恒が飛行機を愛でる描写がすごく好きです。
うんうんわかる、たぶんわたし、大事な本をこういう扱いしてる! 
っていうマニア心を擽られました。

最初の方で、戦闘機にふたりが乗って雲を突き抜けて星空に抜ける場面があるのですが、そこで突然、文章がコミックに切り替わって面食らったのも、カタカタと感想を打ちながら思い出しました。
絵で見せたいところだったんだろうなーと思いつつ、これ文章だったらどうなってたのかなという好奇心もあります。


尾上与一さんて、シリアスでヘヴィーだけどちゃんとボーイズラブでnot JUNE……でもほのかに名残があるという、超レアな雰囲気を持ってる作家さんだなって改めて思いました。
次の作品が待ち遠しいです。

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