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一 穂ミチ 小椋 ムク

大洋図書 2013-02-28
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ボーイズラブ・レビュー


一穂ミチさんの新刊です。
文庫が多い作家さんだなーと思ってるので、新書サイズって珍しいイメージ。
そして、久々に一穂ミチさんでホームラン級のヒットきましたよ……っ!!

基本的にほとんど平均を上回るクオリティで本を出してくれるので安心感は抜群の作家さんなのですが、だからこそ、ポンと飛び出した作品が来ると嬉しいのでした。
読者は贅沢ですね……。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
CGオペレーターの仁科縁はある事情から人と関わることを避けて生きてきた。ある日、上司であり叔父である訓の誘いを断りきれず参加した飲み会の席で縁は編集者の岩崎数真と出会う。数真には、子どものように何でも触って確かめる癖があった。それは子どもの頃、目が見えなかったことに起因すると告白する数真。その話を聞いた縁は過去に出会った「かず」のことを思い出す。縁が壊してしまった幸福な時間と共に―。一穂ミチが贈るオンリーワン・ラブストーリー。

幼い頃に出会って友達になって、でもすれ違って分かれて……成人してからの再会です。
幼馴染み&再会モノで、しかも受さんがトラウマ持ちです。
萌ツボ設定がトリプルヒットです!

受さんは人の顔が認識できないという病気を持っています。
再会して、人付き合いが苦手なのにいつの間にか数真に惹かれていって、その場のノリと勢いで身体の関係になって、そのあと気持ちもついていきます。
でも、どんなに好きでも、数真の顔が分かりません。
それがばれないように細心の注意を払いますが、ばれるばれないを置いても、好きな相手の顔が分からないのはもどかしいし悔しいし悲しい。

必死で隠していたのに、数真には気付かれてしまいます。
気付かれていたと知って、絶望して、縁は数真を徹底的に遠ざけにかかりました。
本気で別れて、もう会わないつもりでいました。
読んでて、彼の悲しさとかやりきれなさとか、病気への怒りみたいなのが伝わってきて、こっちまで胸が痛かったです。

しかし拒絶されても数真は諦めませんでした。
諦めないでくれて本当に良かった。

縁には人の顔が認識できません。
それでも、叔父の振りをして訪ねてきた数真のことには気付きました。
まったく、なんでかわからない、叔父のトレードマークであるサングラスと髪型なのに「違う」と気付いたんです。いやー愛の力ですね!!!

縁の、おそるおそる恋に近づいたり離れたりする気持ちの揺れとか、数真の真摯さとか、2人の気持ちが動いていく様子がほんわり本文からにじんでいて、ストーリーと雰囲気のマッチ具合が最高でした。
幸せな読後感です。

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