櫻狩り 上 (フラワーコミックススペシャル) 櫻狩り 中 (フラワーコミックススペシャル) 櫻狩り 下 (コミックス単行本〔フラワーズ〕)

ボーイズラブコミック・レビュー


少女漫画界の大御所、渡瀬 悠宇さんのボーイズラブです。
この作品、どこにも「BL」って記述が無くて、作家さんも少女漫画の人なので、つい最近までこの櫻狩りも普通の少女漫画だと信じていたのですよね。
先入観て怖い!

でもこれ、BLよりはJUNEの流れを汲む作品だなーと感じました。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
其れは、大正九年。僕が、数えで十七の春だった。「僕を殺して呉れないか」
時は大正九年。一高入学を目指して志高く上京した田神正崇(たがみまさたか)が奇しくも出逢ったのは、謎めいた美青年、俟爵家の御曹司・斎木蒼磨(さいきそうま)だった。その時から、正崇の運命が狂おしく迸りはじめる――!!愛憎入り乱れる、美しくも悲痛な大正浪漫幻想譚!!


カテゴリは、カップリングメインだと主従もので、物語全体を俯瞰すれば家族ものかなーという感じでしょうか。大正時代の華族一家がお話の舞台です。
次期侯爵となる華族の継嗣と、書生として仕えることになった少年の愛憎物語です。

メインカップルでは攻にあたる蒼磨ですが、彼はなんというか、魔性の男でして……受攻両方こなすけど、属性は受。でも愛した相手には攻という。
とにかく、あの時代にイギリス人とのハーフで超絶美形で不幸とトラウマをダブルで背負っててっていう存在自体がもはやジュネ! みたいな青年です。
家族ぐるみのしがらみや、華族としてのしがらみで雁字搦めで、自分の身体を差し出しても心はここにあらずだった蒼磨。

その彼が唯一、執着して愛したのが正崇という少年でした。
彼も四男、しかも不義の子として生まれ、幼い頃に養子に出され、そこでも実子が生まれてからは養い親との間に壁を感じ、無条件で愛されることを知らないで育っています。

幼少期に愛を与えられなかった2人が出会って、どこでボタンを掛け違えたか。
蒼磨は与えるより先に奪い、正崇は尊敬し仕えるべき主の行動に戸惑い反発し憎しみを覚えていきます。

倉に閉じこめられていた櫻子(これが実は女ではなく男でしかも長子だった)もねっとりと絡みつき、元書生で現在は医者となっている男が暗躍し、とにかく情念渦巻くどえらい愛憎劇になっております。

しかもラストがもうね……!
それぞれの道を選んで未来を見つめ始めたという意味ではハッピーエンドなのかもしれませんが、BL的視点から語ればカップリング成立せずというまさかの展開でバッドエンドです。
なんというか……ジュネでした。


現在、様式美としてボーイズラブというジャンル内で確立されている典型的な文法・ゴールはほぼ必ずハッピーエンドに至るという展開に当てはまらない作品です。本のどこにもBLと書いてなくても頷けます。
でもねー、面白かったの。
夢中で全部読んでしまいました。
お正月まで我慢しようと思っていたのに……!

    ↓WEB拍手です↓
   web拍手