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やがて、藍になる (MARBLE COMICS)やがて、藍になる (MARBLE COMICS)
えすとえむ

ソフトライン 東京漫画社 2011-11-25
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ボーイズラブコミック・レビュー


珍しく和テイストのえすとえむさんの新刊。
なんというか、なんていうか、渋いですよ!!!
しかも職人で、兄弟ですよ……ボーイズラブという感じではないんですけど、でもちゃんと根底はBLで、なんかやっぱりこの作家さんはすごいと思いました。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
幼い頃、理由あって「兄弟」として暮らすこととなった大青と紺太。しかし大人になるにつれ、弟・紺太へ兄弟以上の愛情を自覚した大青は、想いに耐えきれず家を出てしまう。ところが数年後、突然実家に戻ってきた大青は、紺太に「家業を教えてくれ」と頼み込み、再び2人の同居生活を始めるのだが…。兄の気持ちを知りつつも、見て見ぬフリをする弟。弟に自分の気持ちを認めさせたい兄。藍染めの工房を舞台に、義兄弟の想いが巡る、えすとえむ期待の和テイストBL!!

血は繋がっていない兄弟。
兄が弟に惚れて、理性に自信がなくなって家を出たけど、結局戻ってきて……という職人の義兄弟ものでございます。
藍染め職人の家で交差するお互いの想いが切ないのです。
お仕事自体も、減ってて斜陽で、カップリングもはっきりしなくてやきもきさせられて、じわじわくる感じがたまりません。

全然明るくないし、むしろどっちかというと暗めで、話にもはっきりしたゴールがあるわけではありません。
全編にわたってどんよりしていると言っても過言ではない。
それなのに、話の流れにすーっと乗せられるんですよねー不思議!

1ミリだってズレちゃいけなかった兄弟は、1ミリどころか根本的な感情からすれ違い、すれ違っても無かったことにはできない。一緒に育った他人という関係は、兄弟愛じゃなく恋心を芽生えさせて、最早軌道修正はできなかったのですね。
紺太も、大青が嫌いではない。でも受け入れがたい……。

「俺たちをつなげてるのはな 血じゃない 血よりも濃い藍だ」

って紺太の育ての父は言うのですが、まさにこれからの紺太と大青の関係はそんな感じで続いていく気がします。


表題作の他に2本短編が載ってますが、それも短いながら良い味だしてます。
特に、学校のプールで夜に泳いで用務員さんに見つかって……っていうのは好き。
ぜんぜん性的なあれこれはないんですが、彼らの関係がなんかこう、BL。
夜のハプニングがあって、それを何度か繰り返して、挨拶しなかった少年が、最後には明るい時間に挨拶するようになるって言う、表に出てくるのはそれだけなんですけど、じんわりしみるお話でした。

渋い、ビターな1冊でした。

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