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桃山なおこ

リブレ出版 2011-07-01
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ボーイズラブコミック・レビュー


台風、行ってしまいましたねー。
大阪はアレです、警報は出てたのですが現実にはそよ風しか吹いてませんでした。
雨もほとんど無し。マーゴンさん見かけ倒し! と思ってたらお余所ではそれなりに暴れていたのですね。でも福島周辺を自重したのはえらかったよ……。暴れん坊だけど優しい攻なんだね……。

さて、そんなこんなで昨晩、天気図を眺めながら今日は暴風と大雨で絶対会社休みだな! とか中学生みたいなこと考えて夜更かししたら、朝に風が皆無で一滴の雨も降って無くて絶望しました。

そして帰宅したらこの本が届いてまして、そのまま読んでしまいまして、ああこんな帰ってきてすぐテキトーな状況で読む本じゃなかったと後悔。
一読して、慌てて着替えて居住まいを正して再読しました。
泣かされるかと思った。
これはボーイズラブやけど、JUNE寄りのお話。
メインのキャラが男3人だけど、全然浮ついてなくてむしろびっくりします。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。
炭鉱のある田舎町に着いた根津は、駅前でチンピラに絡まれ殴り合いの大喧嘩になる。 お座敷で酒を楽しんでいた893の次男坊・城戸は窓から覗き、根津の喧嘩の腕を見初め、止めに入り呼びつけ、「俺の用心棒にならないか?」と誘う。 893と係わり合いたくない根津は断るが有無を言わさず押され、城戸に付くことに。 日々、傍で過ごすうちに、城戸の組内に不穏な空気が流れているのを知る。城戸が囲っている謎の男・譲も現れ…。根津、城戸、譲…そして組の行方。運命を共にするのは誰なのか。

とりあえず内容云々の前に方言萌の人はいっとけ!
というくらい、バリバリの方言がでてきます。
イイ男の方言、大好き。
しかも極道さんやし……極道嫌いだって男を雇うのが極道の次男坊ですよ。

用心棒として城戸に付くようになった根津。
城戸の愛人の譲。
根津にほのかな想いを寄せる譲。
今度こそついた相手を守る気でいる根津。

なんかこう、三角関係じゃないのですよね。
矢印の向きはともかく付随する感情が恋愛感情だけじゃないので……。
主従ものでもあり、友情があり、もちろん愛情もある。
無いのは本格的な肌色シーンくらいのものです。

組を支える父親が長くない状況で兄弟仲は悪く、次男坊は本妻の子ではなく、兄貴は身元のしれない男達を家に出入りさせるようになって、どんどん空気は悪くなっていきます。
明るく楽しいBLの反対方向に全力疾走な感じです。
なんかこう、ページを捲るごとに嫌な予感しかしなくなっていくっていう、もうね!

挟まってくるエピソードも、ほんのり心が温まったり癒されたりするんだけど、基本的に重いのです。
そして危うい均衡にあった兄弟の関係も、父が他界することで崩れます。
もう総崩れという……。
親っていうのは無理だと分かっていても仲良くしろよって言ってしまうものなんだなあとしみじみしてしまいました。

譲を連れて逃げてくれ、と言われた根津ですが、譲を1人汽車に乗せて自分は城戸の元に戻ります。
出来の悪い兄貴が踏み込んでくるまでの、2人が酒を酌み交わすシーンがすごく好き。
話題に上った、根津のスーツの話も。
その後2人で暴れるところも。
最後、どうなったのかをはっきり書いてくれないところも。


でもでも、でもね。
譲が逃げた先の住所を知ってて手紙を書く相手なんか他にいないと思うから、きっとこの後、再会して一緒には暮らせないかもしれないけど、また会えるに違いないのです。
タイトルは「この世界でたった2人」です。
この3人のうちの2人という意味なら悲しい結果が……と思いますけど、3人のうちの誰かから見て「たった2人」だったらみんな揃えるし……!

こういう余韻、久しぶりなので切ないけどすごく心地よかった。

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