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この作品はボーイズラブと呼ばれるジャンルのコミックス短編集です。
中には5作品が収録されていて、いずれも男同士の恋愛模様を描いた内容となっています。

が、このエントリの前半は、BLがダメな人でも読めるように書いたつもりなので、都条例をはじめとする表現規制に興味のある方に見ていただければと思います。

先日、都の青少年健全育成条例改正案が、残念ながら可決されてしまいました。

この条例改正は7月から施行されます。

作家さんや業界が萎縮していくだろうな……という心配はたぶん現実のものとなるでしょう。
都の青少年健全育成条例改正案が招く表現萎縮とはどんなものか

さて、出版社はたぶん多くの人が思っているほど大きな組織ではないし、行政に正面切って喧嘩を売れるほど強くもありません。
流石に小学館と講談社、あと集英社……角川あたりの大手はそこそこ体力もあるでしょうが、ほとんどの出版社は中小企業と考えて間違いないと思います。
それでも今回の規制の当事者(社)のひとつであることには間違いありませんが、できることとできないことがあるでしょう。
規制に反対して会社が潰れましたでは本末転倒も良いところですからね……。


前置きが長くなりました。ここからが本題です。
ここで紹介したいなと思ったのは『表現者にしかできない』戦いを実践した作品のことです。

この短編集の最後に【夏に死にゆく物語】という作品が掲載されています。
ファンタジー設定でもちろんBLですが、都条例が孕む危険性と危うさ、拡大解釈への危険性などを、物語の中で訴えています。

「都条例特集」というようなコンセプトの本ではなく、あくまでボーイズラブという娯楽作品の一部として、表現規制に対する姿勢を表明した、というのは凄いことだと思います。
萌を求めて手に取った人が読むわけですから、表現規制を全面に謳った媒体より間口が広いのです。
具体的にどういうことかというと、腐女子だけど規制には興味なし、そもそも18歳以上だから指定図書になっても自分は買えるし、っつーかそこまで強烈なエ口なんか求めてないから関係ないし! と思っている人がいたら、その人は都条例特集本はまず買いません。
でも萌えが合致して面白そうだと思えば、娯楽作品として「涕涙まくら」を買う可能性はあるのです。

一般向けに翻訳すれば、子供向けのアニメ番組を放映する際、冒頭にテロップで「部屋を明るくしてできるだけテレビから離れて見ましょう」と流すのが都条例特集本で、ドラ○もんが子供達に「部屋を明るくしてできるだけテレビから離れて見てね!」と話しかける形で興味を惹くのが娯楽作品からの問題提起です。

無関心層に考えてもらう、興味を持ってもらうことがとても大切な問題なので、自分の立場からできる周知活動は、ロビイングと同レベルで重要です。
作品の中で規制について訴えるというのは、作家さんができる効果的な周知活動といえるでしょう。

また、この作品を出版に踏み切った出版社(この作品の版元はオークラ出版)も、作家さんの意志を尊重することで、表現規制への反対をしていることになります。
なにしろこの本は同人誌ではないので、出版社のOKが出ないと本になりません。

しかもこの本、さらに男前なのが、最終話が表現規制に関するお話で、冒頭は都条例がシチュエーションを名指してNGとした兄弟モノ……近親相○モノというステキな構成となっております。
(このお話(兄弟物のこと。規制反対作品のことではない)があるから、7月の施行前の出版となったとのこと。つまりこの版元では7月以降はこの手の内容ーー近親相○等の都条例に抵触する性表現ーーは出版しないということです。これはもう、生き残っていくための版元の方針としてある意味仕方のない部分なのだろうなと思います)

反対意見広告の掲載も大事だし継続的にやっていってもらいたいけれども、それだけじゃない戦い方をしてる人たちもいるよという話でした。


ちなみにこの作品に興味をもたれた腐女子・腐男子ではない方へ。
ものすごく内容はまっとうなBLです。紛う事なきボーイズラブです。男同士の恋愛モノです。
手加減とか一般人への配慮とかそういうものはまったくない娯楽作品です。
間違えても「表現規制に反対してる漫画だから読んでみて」と勧められる本ではありません。
手にとってこちらに転んでくださるのは大歓迎ですが、そうでない場合の方が多いと容易に予測できますので、買ってみようかなと思ってAmazonにアクセスする前によく考えてくださいませ。



ちょっと真面目な話はここまで。
この先はただの萌え話です。
腐女子通常運転ですのでお気をつけください。


以下ネタバレ妄想注意! ボーイズラブコミック・レビュー





涕涙まくら (オークラコミックス)涕涙まくら (オークラコミックス)
池 玲文

オークラ出版 2011-05-12
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紹介文です。

優等生で人気者の弟・優亜と、優しいだけが取り柄の冴えない兄・誠吾。一足先に思春期を迎えた誠吾は、可愛がっていた弟と少し距離を置こうとする。けれど、そのことをいじらしく責める弟の無防備なスキンシップに堪え切れず暴走してしまう。そんな兄の想いを受け入れた優亜は、次第に誠吾への執着を募らせて──…。禁断の果実が見せる、うたかたラプソディー。


思春期の兄弟モノですよ!
兄×弟です。
弟が無自覚誘い受という、兄にしてみたらオイオイ勘弁してくれよ、こっちにも我慢の限界もあるんだ!
という話で、もちろん兄の理性は途中で吹っ飛びます。
まあ飛んでもらわないと私が困ります。
弟、ちょっとウザイけど健気で兄が女の子と一緒に帰ってくるのを見ただけで嫉妬したりする可愛いところもあります。

いかん萌える。
このカップルの話はもっと色々読みたいです。
同人とかでやってくれないかな……。


あと好みだったのが、JUNEちっくな前後編の作品「指喰い、月の色人」。
吸血とか食人とかが入ってくる耽美系のお話です。

飢えて人が欲しくなる「指喰い」の受に、攻は腹が減ったら俺の指を順番にやる! 指がなくなる前に良い方法を考えよう! という、あまり具体的な絵を想像したくない提案をするのですが、結局、受は身を引いて姿を消してしまいます。
細部を想像してはいけません。

切なくてほろりとくるお話でした。


最後のお話は、BLとしてはまあネタの部類というか、全体が超展開過ぎて1回目読んだときは実は爆笑したのですが、落ち着いてもう一度読んで、爆笑してる場合じゃねえ、表現規制が暴走したら笑い話が現実になりかねない……と思い至ってちょっと背筋が寒くなりました。

初っぱなが近親相○モノで最後が表現規制ありえねぇ話で締めたこの本、描いた作者さんもすごいけどGOサイン出した出版社もやるなーと思いました。

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