シンポジウム「やおい/BL(研究)の今を熱く語る」に参加してきました。


主 催:大阪市立大学人権問題研究センター
共 催:NPO法人ウィメンズアクションネットワーク、大阪腐女子研究会

司 会:
古久保さくら(大阪市立大学大学院人権問題研究センター)
シンポジスト:
東園子(大阪大学大学院人間科学研究科/文化社会学・ジェンダー論)
堀あきこ(団体職員/マンガ・ジェンダー・セクシュアリティ・社会学)
守如子(関西大学社会学部/ジェンダー研究・社会学)
(五十音順)
コメンテイター:
秦美香子(神戸大学大学院国際文化学研究科異文化研究交流センター/ジェンダー研究・マンガ研究)
増田聡(大阪市立大学大学院文学研究科/音楽学・メディア論)
(五十音順)

主 旨:
「やおい」または「ボーイズラブ(BL)」と呼ばれる男同士の恋愛を主題とした創作物は、女性を中心に支持を集めてきました。一方、「BL本」を排斥しようという動きがあることも事実であり、研究や評論、マスコミの報道、ウェブ上などで、「やおい/BL」は様々に語られています。
でも、そもそも「やおい/BL」って何だろう? どういうところに魅力があるんだろう?
当日は、「やおい/BL」研究者やポピュラーカルチャー研究者が集結し、(刺激的で)熱いトークを展開します!
これを聞けば、「やおい/BL」に関する日頃のもやもやが解消される…かも?

プログラム:
第1部:シンポジストによる発表
堀あきこ「BLはなにを欲望するのか」(仮題)
東園子「やおいはなぜ恋愛を描くのか」(仮題)
守如子「やおい/BLはいかに語られてきたのか」
(発表順)
第2部:全体討論


大変興味深く、そしてタイトル通り熱い語りで、最後まで面白く聴かせていただきました。
文字通り静聴で、会場入ってから出るまで、受付で名乗った以外一言も喋りませんでしたよ! 単独参加のうえ割と人見知りなもので……。


以下、感想です。



まず、やおいとかBLとかボーイズラブとかカップリングとか腐女子とか、そういう特殊用語を音声として耳から聞くと訳もなく恥ずかしいです。

腐女子は、基本的に語られることを想定していないのかもしれないな……少なくとも私はそうだったらしいと実体験から実感。

主催は大阪市立大学人権問題研究センターで、年に何度か人権をテーマに外部に向けてシンポジウムを実施しているとのことでした。たとえばホームレスとかベーシックインカムとか在日外国人の参政権問題とか。
今回のやおい/BL~は特別企画のようですが、よもやこんな人権団体の研究者さんたちに、上記のような問題と横並びで語られる日が来ようとは!

腐女子の萌えって、社会学の研究対象になっちゃったりするのか!

色々と新鮮でした。
今日のシンポジストさんたちのようなテーマで卒論かけたらさぞ楽しかっただろうなあ……と、己の理系な大学時代を思い返して軽く歯ぎしりすることしきり。


全体的に気になったのは、全てのパネリストさんが「これから報告する腐女子やその定義は、全ての腐女子に当てはまるものではありません、あくまで一例です」というような内容の前置きをされていたことです。

腐女子は全般的に「腐女子とは○○である!」と定義されることを嫌います。ネットに漂っているだけでもそう思います。
あそこではああ言っているけど、私には当てはまらない。
○○と決めつけられるのは心外だ。
というような言葉をよく見かけます。
それは「ほっといてくれ、触らないでくれ」という、仲間内だけで完結していたい内向的な心理と「他の誰かと一緒にされたくない」という心理が入り交じってのことなのかなと思います。

流石に内部事情をよく御存知なんだなあと。
確かに腐女子は千差万別、萌の方向性もバラバラでかっちり分類できるものではないと思いますが、そこまで気を遣わんでも! ともちょっと思っていました。
やおいとか腐女子に普遍的な定義は存在しないけど、その時その場所ではこうだった、みたいな形で残していかないと体系的な研究って難しいなと思います。
流動的な存在だからこそ、ある側面を切り取って語ることを必要以上に恐れないでもらいたいなと。
そう言う私も、ブログで色々予備線張ったりするのであんまり人のこと言えないんですけど。



さて簡単にパネリストさんの報告内容を振り返ってみます。

1人目:堀あきこさん
「BLは何を欲望するのか」


BLというのは受・攻の関係性をメインに据えた恋愛ものが中心で、男性向けと比較するとその差は明確になる。
男性向けは主に女性キャラに焦点が絞られ、男性キャラは限りなく透明に近い存在として扱われ、それによって読者は男性キャラに自己投影して女性とあれこれしているという妄想を楽しむ。
翻って女性向けはというと、受も攻も明確に描写され、読み手は受攻どちらにも自己投影ができ、さらに第3者の視点から2人の関係性を眺めて楽しむことも出来る。
ここには男性向け作品の文法では解釈できない楽しみ方がある。
腐女子が萌えるのは男同士の対等な恋愛。
つまり彼らの関係性に胸を熱くしているのである。

昨今問題になっているBLの有害指定、つまりBLを性的なものとして規制しようとしている側は、BLの性的表現を男性向け作品の文法でのみ解釈して危険視しているように感じるが、まずそこから違うのではないか。


カップリング戦争の原因の話とかもさらっと出てきて楽しかったです。
私も剣心受以外は認められません。



2人目:東園子さん
「やおいはなぜ恋愛を描くのか」


二次創作メインの報告でした。
「やおい」系腐女子はオタクの最大派閥である。
彼女たちは原作の人間関係を腐眼鏡を通して恋愛関係に当てはめ、やおい的解釈をして楽しむ。
「やおい」とは、一般的に恋愛時にとるであろう行為の数々(愛のコード)を原作の人物相関図に当て込んで創作したり読んだりするものだ。
男同士の関係に愛のコードを放り込み、彼らの絆の強固さを表現する手段としているのである。
これらの愛のコードを共有することで、女同士のコミュニケーションが効率化されているという面もある。


個人的に彼女の報告が一番面白かったです。
やおいを読めば読むほどBL的文法としての愛のコードに習熟していく……。



3人目:守如子さん
「やおい/BLはいかに語られてきたか


やおい論に関する報告でした。
やおいやBLは否定的に見られたり語られたりしてきた。
またやおい自体が同性愛差別であるという批判、恋愛と結婚を分けて考えるようになってきた若者の性に対する意識の変化、BLの性表現にものびてきた規制、腐男子の存在……。

究極の愛を表現するためのあの決め台詞、
「俺はゲイじゃない、君だけが好きなんだ」
というのは、男同士では愛し合ってはいけないという前提に成り立つ理屈で、これ自体が同性愛差別なんじゃないかという指摘。

なぜ男同士なのか。
第3者の視点から安全なポジションで性表現を楽しめるから。


とにかく濃かった。
BL系雑誌を肌色率順に並べたパワポとか、うわあってなりました。
本気で研究してるわ……!
ポルノとしてのBLというのも興味深かったです。
で、俺はゲイじゃない、お前だから好きなんだ! という台詞が差別だって言われると頭を抱える。
なぜならその台詞が私は大好きだからだ!!
現実のゲイの方々がどうという意識がまずない。
あくまでファンタジー。ゲイじゃない、お前だから~というのは、普通の恋愛より高いハードルだってお前のためなら超えてみせるぜ! だって惚れてるからな、男同士とか世間の常識なんか無視無視! 愛こそ正義だぜ!
……という攻様の潔い覚悟を表す台詞なのです、私の中では。

でも差別だって言われると確かにそうなのかもなあ。
難しい。


その後のディスカッションで、東さんの「愛のコード×人物相関図」にコメンターの秦さんが「いや私は人物相関図×愛のコードだと思います!」という意見を仰られて、なんとカップリング戦争の実演がマジで行われて貴重な体験でした。
(もちろん、お二方とも立派な見識をお持ちの大人なので、言葉の刃で斬り合ったり噛みつきあったりとかそんなんではなく穏やかな言葉のやりとりでした念のため)


最後に、質問者のベルント先生(京都精華大の先生。表現規制の集まりではパネリストをされていた方です)が、BLを語るときに外人を外して考えられるか云々というような話題になったときに、堀さんがアラブを例に出されて、まさに鞄にアラブが入っていた私は密かにいたたまれない思いで小さくなっていたのでした。


13時半~17時半まで、大変熱く濃密で有意義な時間を過ごさせていただきました。
ありがとうございました!


※3名のシンポジストさんの報告内容は私がまとめたものです。報告内容を全て書き出したわけではありません。
省略したり私の言葉でまとめた部分が多々あります。大筋間違ってないと思いますが、解釈違い等がありましたらご容赦下さい。


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