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王子と小鳥王子と小鳥

芳文社 2009-08-29
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ボーイズラブコミック・レビュー


アラブブームは静に萌えさかり続けているというのに、なかなか心の琴線に触れる良アラブに巡り会えません。
一時ボーイズラブ業界に吹き荒れたアラブの嵐の時もそうでしたが、徐々に絶対数が減ってきたような気がする現在、私が心トキメくアラブモノは絶滅危惧種並に少なくなって参りました。……単に探し方が足りないだけかもしれませんが。

さて、そんな乾いた私の心を潤してくれたこの作品

アラブには珍しいシンプルでストイックな表紙に釣られて珍しく書店でお買いあげしたこのコミックは、かーなーり! ツボ! でございました。

ま、ストイックなのは絵とデザインだけで、帯のアオリは正しくアラブでしたけれど。

以下ネタバレ妄想注意!

紹介文です。
貧乏美大生・鈴木圭一が目覚めると、そこは砂漠の国のオークション会場だった。借金のカタに奴隷として出品された彼が、強欲な第一王子の手に落ちようとしたその時、その弟であるハーリド第二王子によって買い上げられる。ハーリドの奴隷となった鈴木は日々逃亡を企てるが、王子の優しさに少しずつ惹かれはじめ…。表題作他、心の欠けた大人と、彼に買われた少年の恋を描く「淋しさの値段」を収録。苦悩しながらも真実の愛を手に入れる恋人たちのドラマチックコミックス!! 王子と鈴木の後日談描き下ろし付き

アラブに必須とも言うべき、拉致監禁オークション、アラブ王子に落札の後に男なのにハレムへ。
いう手順を踏んで中東入りする日本人の受。

正当なアラブBLにふさわしい導入だったにもかかわらず、初めはいやで仕方なかったのに、いつの間にか王子の熱い吐息とプロ裸足の手練手管で身体も心もメロメロ……という展開にはなりませんでした。
表紙を投影してか、受を買った第二王子はひたすらストイックな攻だったのです。
うっかりその場のノリと勢いで助けた日本人の男を好きになってしまうのですが、手を出したら自害してしまうかも。と、いつまでたっても同じベッドで眠るだけ。
なのに寝言で受が呟く「じーちゃん」が恋人だと勘違いして嫉妬したりするのです。
なんて可愛い攻なんだろうっ!

BL界のアラブに自制心を持った攻が存在したなんてっ!

まずそこに感動してしまいます。
頭がよくて仕事も出来る、なのに第二王子と言うだけで皇太子になれないハーリド。
あんな出来の悪い第一王子が国のトップになったら、この国滅びるんじゃ? みたいなのが兄貴かと思うとはらわたが煮えくり返りそうなもんですが、ハーリドはひたすら、国の決めごとに忠実であろうとして兄を立て続けます。
それでも兄に大切なものを取られるのは許し難い。
ハーリドは弟に、

兄に壊されるくらいなら、取り上げられる前に自分で壊してしまいなさい

と教え諭します。自分もそうしてきたから、と。
最後には壊れるものでも、まだ自分に所有権があるウチに自分の手で壊した方がまだマシだと言うのです。
まぁそらそうなんですが、やるせない話ではあります。


でも、ハーリドは、スズキをよこせと言われたとき、初めて兄に逆らいました。
兄に逆らうことが罪でも、おまえを窓から投げ捨てて壊すわけにはいかないからと、日本に帰してくれたのです。
いやー、なんかじんわり来ました。


そもそも言葉が通じないので、意思の疎通がスムーズにいかないのも良い味出してます。
カタコトのアラビア語と日本語に萌えました。
ハーリドは、スズキに、王子としてではなくハーリド個人として見てもらえて本当に嬉しかったんだろなー。

いやいや、素敵なアラブでした。

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