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テイク・ラブテイク・ラブ
野村 史子

日本文芸社 2007-10
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ボーイズラブ・レビュー


なつかしい……。
私がこの作品を初めて読んだのが、確か中学3年生だか高校生になりたてだかの頃です。
栗本薫さんの、終わりのないラブソングよりちょっと後に読んだのでした。
JUNEの名作、悲恋・死ネタどんとこい。
現行ボーイズラブのタブーを頭から無視して驀進している古典作品です。
古い作品です。
でも、古くてホコリ被ってても、それで本体の価値が落ちることはないと思います。

明るくも楽しくもないし、ちっともラリパッパしてないし、ストーリーはだいぶヘビーです。でも、ドナドナする気には今まで一度もならなかったし、時々思い出しては読み返したりしていた大事な作品です。

なので、内容は全部知っているし覚えているし、特に目新しい感想とかないのですよね、自分の中に。

むしろ、これを今回初めて読む人の感想が聞いてみたいです。
もし読まれたら、TBとかコメントで叫んでいただけると嬉しいです。

もう、自分がこの作品を初めて読了した時の感想なんて忘れてしまったしなぁ。


とりあえず、作品の内容云々の前に、この装丁のセンスは如何なものかと言いたい。
検索した時、ホラーコミックスの表紙かと思ってスルーしかけてしまいましたよ。
好みを言わせてもらえるなら、イラストも前のまま復活して欲しかったです。

JUNEってボーイズラブの古典だと思っていますが(現代文・古文の感覚)、これじゃ、古典じゃなくて妖怪に近いような……ボーイズラブの妖怪……ふぅ。


以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。

妹は兄を愛し、兄の恋人・春樹を憎んだ。禁断の愛はもつれにもつれ、妹は死に、兄は日本を離れ、狂気と混乱の中にたった一人、春樹は置き去りにされた―悲鳴と裏切りの果ての哀しい愛を語り尽くし、発表されるや、たちまち少女たちの心をふるわせた青春の名著が、完全復刻。


共闘時代のお話です。
発表されたのが昔なら舞台もだいぶ昔です。
私の親より更に上の世代の時代設定です。

とりあえず、そのへんの感覚はちょっと、というかほとんどまったく想像がつきません。

「闘争を堕落させる個人的性愛の、資本主義的腐敗を糾弾する」

とか罵られて受の春樹はぽかーんとしていますが、私も一緒にぽかーんと。
文章の前半と後半の繋がりが全く理解できないんですけど。
なんで個人の性的嗜好が資本主義的腐敗になるんだろう……小難しい思想書を何冊か読破したらなんとなく分かるようになるんだろうか。
つーか、これを大真面目に主張する青年がまさか本当に存在したのか? 
こういう人物が小説内に書かれると言うことは、フィクションにしても、共闘を知る人々にはそれなりにリアリティのある人物像だったのか?
……多分、こんなに自信たっぷりに言い張るんだから、きっとどこかの偉い思想家がそういうことを言った……のか???

と、やっぱり何度読んでもそのへんには疑問符が飛び交うわけです。

なんとなく、設定背景と私の感覚の間には深くて長い溝があるように思われます。
その、そこはかとなく理解できない神秘的なモノがあるから、惹かれるんだろうかと考えてみたりするわけですが……。


ストーリーはかなり、ドロドロのカオスです。
妹はお兄ちゃん(山崎)が好き、春樹(受)も山崎が好き、山崎が警察に捕まって淋しい、ああ、ここにちょうど自分の好きな人の面影がある人がいるわ。というので雰囲気のまま致してしまった挙げ句、妹は妊娠。
あれこれの末、錯乱した春樹は山崎の妹を刺してしまい、妹は早産して鬼籍に入り、春樹と山崎の関係は明るみになり、山崎は淫行罪で手が後ろに回り、春樹は傷害で少年院に放り込まれ……。
いやもうえらいことです。
18歳未満の少年に手を出して捕まるなら、世の中の攻どもはずいぶんな人数が豚箱入りだと思うわけですが。
(中学生の甥に手を出したTOKYOジャンクの貴之とか、確実にアウトだ)
結局、山崎は春樹から逃げるように海外に渡って帰化してしまい、春樹は自我崩壊しそうになりつつ、自分の子供を引き取って育て、15年後に、ふたりは再会します。

15年っ!!!

すごい数字です。

ちなみにお話はこの15年後から始まって、山崎の回想という形で進んでいきます。
でも途中で春樹視点になったり他の人視点になったりとあちこち飛び回り、時間軸も過去と現在を行ったり来たりするので、初めてだとちょっと読みにくいかも。
ついでに言うと恥ずかしい台詞も満載です。

愛が理解できなくて、何が革命だ!」とか。

「今のブルジョワ退廃文化の中だから、そんな異常な性が生まれるんだ。
社会主義になれば、そんなものはあり得ない」とか。


でも好きなんですよね~。



後半に入っている、道場主の栗本薫さんの爆笑を誘ったというトンデモ設定の「薔薇はもうこない」ですが……。
ああ、その当時はこれがネタとして笑い飛ばせる設定だったんだなぁと遠い目になってしまいました。

だってですよ。
倒産しそうなおまえん家の会社に援助してやるから、その代わり俺の玩具になれ。
なんて設定、ボーイズラブじゃ河原の石レベルに大量に存在してますよ
トンデモどころかむしろデフォ? というレベルです。
まぁ、最先端を音速で走り続ける目まぐるしいボーイズラブ業界といえども、当時一部で話題だった「影人たちの鎮魂歌」には追いつけてませんけど。
(「影人たちの鎮魂歌」:当時小説道場に投稿していた作者が、自分の書いたJUNE小説のテーマソングを2番まで考えて、なんとそれをキャラに歌わせたという、ある意味伝説的な作品)

色々と懐かしい思い出に浸れた1冊でございました。

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