邪道 比翼連理 中 邪道 比翼連理 中
沖 麻実也

講談社 2007-06-01
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ボーイズラブ・レビュー


既刊の感想はこちら

半年ぶりの新刊。
そして、ついに来たか……という巻。
これの前に読んでいた数冊の感想が頭から吹っ飛びました。
覚悟はしていましたが、やっぱりヘヴィーでした。
ずーんと胸にきます。


以下ネタバレ注意



ついにここまで来てしまった文庫版。
桂花の恋人、柢王が逝ってしまいます。
敵の親玉が、掌で弄ぶみたいにして桂花の目の前で嬲り殺しにしてしまうのです。
育ての親と別れて以来、誰のことも信じずにひとりで生きてきた桂花をつかまえて、信じることとか人を好きになることとか、そんな感情を1から教えて、それを実践するように愛しんでくれた男を失う悲しみはどれほどのものなのか……。
軽く想像の範疇を越えます。

柢王にしても、心の底から大切にしていた恋人をおいて逝かなければならないわけで、やりきれなかったことでしょう。桂花に繰り返し言ってきた「絶対」を、不本意ながら自分のほうから裏切ってしまう形になってしまったのですから。
死ぬには若すぎる(まぁ、人間界単位では千何百歳とかですけど)し、もう親友の助けになることもできないし、自分たちの生きる世界の秘密も中途半端に知ってしまったままです。

霊界で別れる時、最期まで恋人や親友を気遣っていた柢王、哀しいくらい強くて格好良かったです。一番悔しくて悲しくて泣きたいのは自分のはずなのに、笑って逝ける男なのです。
邪道ワールドには転生があります。霊界、天界、人間界の3つの世界の中で、システムとして構築されています。だから柢王も転生するのですが、当然、生前の記憶なんて残りません。
何も覚えていない、柢王であって柢王でない命を、この先ティアやアシュレイや桂花は見なくてはならないのです。
柢王の魂は生きている、でも柢王には二度と会えない……。
これって、たぶん、とても切ないです。

なんというか、とりあえず私、冥界教主だけは許せん。
登場人物の誰が許しても私は許せん。
なんだろう、彼の登場ページをぶちこんだ藁人形作って夜中に神社で釘打ってやろうかと思うくらいには腹立たしい奴なのです。
心の狭いことですが、苦しみ抜いて後悔しまくって死んでしまえ
と本気で思ってます。彼ファンの方には申し訳ないですが。
この先も色々惨いことを平然とやってのけそうなこの男……。
お前なんかに殺されていい男じゃなかったんだよ柢王はっ!

もっと長く生きて、もっと色々できたはずだったのに。
死んだらもう何もできないじゃない。

でも。
作者はハッピーエンドになると断言して下さっているので――

さようなら柢王。でもまた会えると信じています。



文庫版は設定も登場人物も増えて盛りだくさん、な加筆訂正……というか改訂版という勢いの変わりっぷりを見せていますが、一番、これいいなーという設定が、今回出てきた魔族の寿命のお話でした。
魔族は、魔族同士で融合したり共生したりすることでほぼ不死になれる、ということ。
逆に、長く魔界の食事を摂っていなかったり他の魔族の血や肉を食べていないと体が弱って死んでしまうこと。
つまり魔族は、自分で自分の寿命を決めることができるのです。
(自殺とは、ちょっと違うような気がしてます、結果としては同じなんですけども)

桂花は、柢王と生きて、柢王と共に死ぬことができる生物だったのです。
もしこの先、もう一度柢王と生きられたなら、きっと桂花は柢王に寿命を合わせるんだろうな、と。そしてたぶんそれは、桂花にとっては最上の幸せなんでしょう。

亡骸を東国に返還して、王族としての国葬を――と毅然と言ってのけた桂花は、本当に柢王のことが好きで、彼のことを思っていたのです。
泣いて縋って、恋人の名残を手ずから弔いたいという自分の希望より、柢王の立場を尊重した桂花、すごいよ。
ただ、大切な人が死んで、その喪失感に襲われるのって、むしろ葬式とかが全部終わって落ち着いた時なんだ……ということを考えると、辛さで言えば次の巻のほうが痛いのかも。
あわわわ。
アシュレイもティアも桂花も、もう柢王はいないという事実を、日常の色んなところで感じながらこの先、生きていかなきゃならないのです。
しかも敵は丸ごと残ったまま。厳しいなぁ。
彼らの試練はまだまだ続きそうです。

読者も試練だし、たぶん書く側も試練だろうと思います。
精神削り取られそうな展開がまだまだ続くわけですし、次からはいよいよ、新書にないお話に突入していく模様。
……年内に下巻を拝むことができるよう、祈る気持ちで待つことにします。

今回は最初と最後にラブラブいちゃいちゃのまったり癒し系のお話が入っていて(柢王と桂花のお話はCIELでコミックにもなっていました。桂花のいる濡れ場、めっちゃ好きです。私も彼の刺青と戯れてみたいわ~)、ほっとできます。唯一(二)の癒しでございました。

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