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ボーイズラブ に参加中!
脈絡のないエントリになってしまいました。
でもせっかく書いたので残しときます。
読むの怠い人は最後の数行だけで事足りると思います。

関連:愛でしか作ってません


先日、ビブロスに続いてリーフ、雄飛も飛びました。
或る編集者のオケラ日記さんのところの再編加速にもあるように、まだまだ出版社の倒産やM&Aは起こっていくようです。
ボーイズラブ業界も、否応なくこの再編の波に放り込まれているようです。
というかむしろ、煽りを食らっているというより渦中にいるように見えます。冷静に考えれば、現在進行形のBL版元自然淘汰は起こるべくして起こっているのです。

かつて、まだボーイズラブなどという小洒落た造語がなかった時代の少女達は、自らの萌を表現するために同人誌を発行し、自力生産派ではないけれど「やおい遺伝子」を持っていた少女達は、どこからか湧いてくる未知の欲求を満たすために、列をなしてイベントで同人誌を買いまくりました。いわゆる同人バブル。
まだ商業誌として発行されて一般書店にJUNEやボーイズラブが並ぶ前の話です。
(私はそのころはやおいのやの字も知らない一般人かつ子供でした)
イベントにおける彼女たちの熱狂ぶりは、それはそれは凄まじかったそうです。
なぜなら、イベントに足を運ぶ以外にまとめて萌を補給する手段がなかったのですから。
トルーパーや聖矢、キャプ翼の全盛期、コミケを筆頭にイベントへの参加者は鰻登りに増え続け、大手壁サークルにできる長蛇の列はその辺のバーゲンの比ではなかったとか。
そう。この時代、まさに萌は一極集中していたのです

人が集まるところには金も集まる。
「このジャンルは儲かるに違いない」
と、至極もっともな判断を下した出版社は、90年代に入ると、すでに刊行されていた「JUNE」に習うかのように次々にボーイズラブ雑誌を創刊し、専門レーベルを立ち上げ始めました。
イベントで萌を自給自足しつつ腕を磨いていた同人作家たちを引き抜き、バックに花背負って裸でくんずほずれつしている男どもを引っ提げ、商業誌に殴り込みをかけたのです。

その読みは見事に的中したのでしょう。
栗本薫を始めとするJUNEの書き手や、明るく楽しいライトなボーイズラブの書き手まで、様々なタイプの作家が商業誌を通して陽の当たる世界へと進出していきました。
BLに参入する出版社は雨後の竹の子もかくやという勢いで増え続け、いつの間にか本屋には専用のコーナーまで出現するようになったのです。
もはやイベントは、萌を満たすための唯一の場所ではなくなりました。やおいの申し子たちはわざわざイベントに通わずとも、簡単に萌を手に入れることができるようになったのです。
またインターネットの普及により、少女達は無料で萌を発散することのできる、webサイト(やブログ)というお手軽便利なツールを手に入れました。

本屋に行けばよりどりみどりのボーイズラブ。
家に帰ればこまめに好き勝手に更新できる萌サイト。
細分化されるジャンル分けに、流行り廃りの激しい同人業界、千差万別の萌と、溜め込まずとも気軽に発散できる萌、己だけの好みを主張する腐女子たち。
――萌は分散しました

さて、ここで考えるべきは、そもそも腐女子の総人口は何人なのか? という点です。
いかに万単位の人間がイベントに参加し、十万単位の人間がBL商業誌を買いまくっていたとしても、です。
どんなに頑張っても、ミステリの売り上げには届かないでしょう。
ミステリを愛読する人間の総数とボーイズラブを愛読する人間の総数は、おそらくゼロの数からして違うはずです。
数少ない分母に、アホほど分子を増やしたらどうなるか。
小学生でも分かる算数の話です。
1冊あたりの需要は確実に減っているはずです。
つまるところは、1冊ごとの売り上げが下がります。

単純に計算すると、本の売り上げから制作費(印刷、流通、作家への原稿料や印税等々)を引いた場合、1万部前後売れたとしても会社に残る純利益は百万そこそこです。
そして今や、1万部以上売れる商業BLが何冊あるか。
……勝手な予想ですが、私は10%前後が良いところじゃんじゃないかと思います。
20%もあったら御の字、というところではないでしょうか。
そうだとすると、それほど大きくない編集部は、部員の給料を稼ぎ出すだけで精いっぱい、というくらいの自転車操業になっている可能性が高いのです。質はともかく、とにかく数を発行しないと生き残れないのです。
少ない餌を取り合えば、弱い者から死んでいくのは自明です。

そして困ったことに、野生の獣と同じように会社というものは弱った姿を極力外には隠します。経営が傾いていようが、赤字で真っ赤な帳簿を抱えていようが、倒れる直前までその事実をひた隠そうとします。
そして突然の倒産→絶版。
読者からすれば、「え、まじ!? なにそれ聞いてねーっ!」ということになります。
萌の分散は、ここでも困った事態を引き起こしてくれます。

世間一般には、誰もが価値認めるプレミア商品というものが確かに存在します。
出版関係でいえば、たとえばそれは手塚治虫の初版本や直筆原稿だったり、文豪のサイン入り本だったり、というところでしょうか。
そういったものは、たとえ絶対数が少なかろうと、確実に誰かが保護し、然るべき場所で然るべき保存をし、または然るべき値段が付けられて市場に出回ります。
しかし、ボーイズラブ関連では少し事情が違ってきます。
確かに、この業界にも共通のレアものは存在します。ヤフオクでは絶版になった名作の値段が高騰することもあるでしょう。
しかし。その価値が分かるのは絶対的に数の少ない腐女子だけです
一般人にとっては、たいして売れもしないのに棚を占領する、二束三文にしかならない紙の束です。そういう本がどんな扱いを受けるのか、私はよく知っています。
古本だって、売れないものは95円コーナーに追いやられ、それでも売れなければ捨てられます。消えてなくなってしまうのです。

世間において少数派の腐女子にすらほとんど注目されない作品は、更に悲惨です。
萌が分散した結果、腐女子には、「この作家さんの良さが分かるのは私だけよ!」というマイナーな好みを持っている人が少なからず存在します。
……私にしか良さの分からない、発行部数も数千部のボーイズラブが絶版になった場合。一度手放したら、下手をすれば二度と手元に確保することはできません。
絶対数が少ない上、誰も気にも留めないような本が生き残っていく確率は極めて低いのです。
そういった作品は、たとえ倒産した版元がどこかに引き取られても、まず新装版になって復活することはありません。だって金にならないから。
悲しいことですが、これが現実です。


このジャンルがメジャーになることは、この先もないでしょう。
業界が再編されて大手だけが生き残っても、そこに求める萌がなければ、腐女子は逞しくまた自分だけの萌を自給自足するのだと思います。
かつて、同人作家が集まって会社を作ってしまったように。

自分だけの萌が欲しい。
でも、その萌はとても脆弱で気を付けないとつかまえ損ねてしまう。
では萌を守るために広く世間にこの特殊なジャンルを浸透させるか。
――それは困る。一般人も腐女子も、お互いに困る
じゃあどうしようか。


……こんなことをつらつら考えていたら、無駄に長くなってしまいました。


結局のところ、自分の萌は自分で守るしかないのでしょう。
業界が再編されようと、どこの版元がM&Aで名前を変えようと、要は求める萌が得られればそれで良いのです。

気に入ったらとりあえず買っとけ。
これは良いと思ったら手放すな。
そして密かに腐女子人口の増加を図る。

この業界がどうなるかはとても興味深いですが、どう変わっても根本的なところは変わらないのだろうなーと思います。

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