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ボーイズラブ古典特集第3弾


この作品をボーイズラブと読んで良いのか、数年ぶりに再読して少し悩みました。
少なくとも現在主流(?)の「男同士の恋愛をテーマにした作品で、明るく爽やかなもの」という作風ではありません。むしろ、ボーイズラブと呼ばれる小説群の多くがひたすら目を逸らし続けている現実(親の理解や周囲の反応など)に、許されるぎりぎりのラインまで挑戦しているように見えました。

少女漫画(そう、これ、発売された時のカテゴリは少女漫画なのです)の立場から、真摯に同性愛に向き合って表現された作品です。

萌えはありませんが、真摯な愛のある作品だと思います。
私はこの作品が大好きなのです。


以下ネタバレ注意!




ゲイであることをひた隠しにしている警察官のケインは、ゲイが集まるバーで運命に出会います。まさに一目惚れ。メルに会って、ケインは初めて恋をしたのです。
自分がゲイであることに引け目を感じているケインは、親にも自分の性癖を告白できず、メルと同棲するようになってもそのことでよく喧嘩になりました。また、メルに出会うまでかなりラフな性生活を送っていたケインは、何度か浮気もします。一番最悪だったのは、メルの元恋人と、あろうことか自宅のベッドでコトに及んだことです。
とりあえず私がメルなら問答無用で家から叩き出します。
所々に見られるケインの体育会的な無神経さにはかなり神経を逆なでされました。

フリーな性交渉には抵抗を感じないのに、自分の性癖とは向き合いたくない。
そんな思いを抱えているケインですが、彼がどう思おうと、現実は圧倒的な存在感で彼らの前にあります。彼らが越えなければならなかったその現実の壁が、ケインの両親でした。
ケインはついに両親にカミングアウトをし、メルを連れて実家に帰ります。
しかも滞在期間は1週間。
意外にも息子の恋人を受け入れられなかったのは母親の方でした。
はじめましての挨拶の時は、握手も交わせないほどの嫌悪感を抱えていたのです。何の覚悟もなく二人のセックスを見てしまったことも、その嫌悪感に拍車を掛けたようでした。
それでも、一緒に過ごし、メルに触れ、友人に相談し、夫に励まされて、息子の恋人を受け入れる努力をするようになっていきます。
またケインは、幼なじみには受け入れてもらえると思ってカミングアウトし、思いきり拒否されてしまったことで落ち込みます。
ニューヨークに帰る時、ケインの母親はメルと握手を交わしました。
彼らとケインの両親は、ひとつ壁を越えたのです。


メルの過去も、二人の生活に影響を与えています。
母親と、ほとんど自殺のような形で死に別れ、元々父親の顔を知らなかったメルは叔父の家に引き取られます。しかし叔父に性的虐待を受け、高校卒業を待たずに家を飛び出してしまいます。
彼は生きるために男娼になりました。
「なぜ男娼になった」
と訊くケインに、泣きながら、
「お腹が、すいてたんだ」
と答えたメル。

「すごく すいてたんだ ベッドが恋しかった 安らいで眠りたかった 汚れた路地に蹲って 飢えと寒さと危険に脅えるのは 終わりにしたかったんだ」

読み返した時に一番、心に響いてきた場面だったかも知れません。
(初めて読んだ時は、最後の場面が一番印象的でした)

生きるために一晩10ドルで身体を売ったメルが、言いようもなく悲しかったのです。
学歴も職歴も金もなかった彼が生きるために危険な性行為を重ね、それを負い目に思う様はどうしようもなく切ないのです。

それでも、現実に生きている二人は愛し合って幸せでした。
形式だけのものですが、ゲイ教会で結婚式も挙げました。
理解のある上司や親に祝福されて、彼らは幸せの絶頂を味わいます。


そしてその直後、メルが攫われて行方不明になります。
救出されるまでの1ヶ月間、過去にトラウマを抱える連続殺人犯に監禁され、レイプされ、目の前で人を殺され、メルは心と身体に大きな傷を負うことになります。
長いこと、ケインを受け入れることができなくなりました。ニューヨークにも住めなくなり、二人はケインの実家に引っ越します。
そこで療養し、静かに傷をいやしていくメルと、それを支えたケインとその両親。
メルは次第に立ち直り、ようやくケインを受け入れられるようになり、高校卒業資格を取り、大学に進学することになります。籍も、ケインの籍に入りました。
やがて2人は1人の女の子を養子に迎え、育てていきます。


腎臓癌に冒されたメルは、52歳で他界しました。
ケインはかけがえのないパートナーを失い、生きていくことになります。
ケインは言いました。

「俺はメルと過ごした時間と同じ位 メルがいない時間を過ごしたよ」


この二人の一生は、二人が育てた女の子・エリカの夫が小説にしました。
義理の息子のインタビューに、ケインは答えています。

「彼の返事はこうさ『俺はフリーセックスはしないんだ』
メル・フレデリクスはそーゆー男だったよ。

はは…そうだなあ とにかく一目で恋におちたんだ 
”ジーザス 運命だ” そう思ったよ」

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