4576051164作る少年、食う男
椹野 道流 金 ひかる


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ボーイズラブ・レビュー



椹野道流さんのボーイズラブ小説です。
彼女は鬼籍通覧シリーズで知っていたのですが、BL業界では右手にメス左手に花束シリーズで有名なんですよね。……そっちは未読ですが。

内容はファンタジーなのですが、タイトルだけでは良く分かりません。
(私ははじめてタイトルだけ見た時、エリートサラリーマンと家政夫をする少年を思い浮かべました)
ただ、表紙を見れば、中世風ファンタジーかな、と言う気はします。
設定はとても好みでした。


以下ネタバレ妄想注意!





紹介文です。


港町マーキスで検死官を務めるウィルフレッド。
耳慣れぬ職業、銀髪に暗青色の瞳、高い身分を持ちながら社交界に出入りせず独り身を貫く彼はいつしか人々の間で「北の死神」と呼ばれるようになっていた。そんなウィルフレッドが出会ったのが、孤児院出身で男娼のハルだった。
料理の勉強がしたいと屋敷に出入りするようになったハルは、ウィルフレッドに生きた人間の肌の温もりを感じさせた。それは北の国からこの街に流れ着いて初めて知る感情、<愛しさ>を彼にもたらすようになる。
ところが些細な行き違いからハルが街の荒くれ者たちに囚われ、嬲られるという事件が起こり・・・。男前で誠実な旦那様とはねっかえりな使用人兼助手が、近世ヨーロッパ風港町で巻き込まれる事件と恋の嵐!



過去に恋愛(政略結婚)がらみのトラウマを抱えたウィルフレッド(攻)と、身元・人種不明の孤児ハル(受)の馴れ初めです。
ハルの無邪気さというか人間くささに次第に惹かれていくウィルフレッドがやたら可愛かった気がします。
ハルは素直だし一途だし(しかも長髪)、もう典型的な受け少年です。
料理を習いにウィルフレッドの屋敷に出入りしはじめたのがきっかけでお互いがお互いに惹かれていくわけです。
ウィルフレッドは検死官なので、それがらみの軽くミステリ仕立てのストーリーもあり、マーキスという町の作り込みもありと、世界観とか話の筋立ては良い感じでした。
いや……ファンタジー好きから言わせてもらえば相当好みでした。

ただ、なんというか、泥臭さのようなものがすっぱりなかったような気がしいてちょと物足りない気分です。たとえば、ハルが孤児院を出た後にどんな風に男娼にまで堕ちていったのかとか、説明はあったけれども直接の描写がなかったり、ハルが攫われたのをウィルフレッドが助けに行くところが、あっさり見つかりすぎたり……。
あとは彼らの内面のドロドロした部分がなんとなく流されていて、きれいすぎたというか。
二人ともけっこう重い過去を背負っているのだから、もうちょっとくっつくまでに一波乱あったり(どうしても相手を心から信じられないとか)しても良かったんじゃないかなーと思ったのでした。
続編が出たらそこで書かれるのかな。

確かに好みだし面白かったのです。
ミステリテイストの部分は、ちょっとお粗末すぎた気もしますが……それメインじゃないのであまり気にはなりません。
もうちょっとばかしパンチが欲しかったなというもったいなさの残る読後感を味わいました。

個人的には続きがあるなら、ウィルフレッドの執事・フライトさんの過去話がぜひ知りたいです。……主人よりよほど世慣れた脛に傷のある伊達男なので。

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