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邪道 苦海芳魂 (講談社X文庫 ホワイトハート)邪道 苦海芳魂 (講談社X文庫 ホワイトハート)
川原 つばさ 沖 麻実也

講談社 2005-08-06


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ボーイズラブ・レビュー



やっとこさ手元に……。
8月1日から近所の本屋に日参していたんですが、
やっぱり3日までは入荷されなかったのです。

活字倶楽部の裏表紙に印刷された桂花に悶絶し、
完全書き下ろしの謳い文句に狂喜乱舞しつつ新刊をレジへ。
嗚呼、1冊丸々書き下ろしの新刊なんて、一体どれくらいぶりでしょう。
待って待って待ち焦がれて苦節ン年、ようやく報われた気分です。

でも読み終えるまでにかかる時間は……。
祭りの時間はいつでも短いのです。


以下ネタバレ妄想注意!





短編が3本という構成でした。
順番にいきます。


『啼夢(ゆめがなく)』

柢王の身体に入り込んだ魔族の夢にうなされる桂花の話です。
新書版1巻に収録されている外伝、『呼夢(ゆめがよぶ)』の続きのストーリーですが、作中に説明されているので、読んでいなくても大丈夫です。

「もしあの時……」というたぐいの後悔は誰しも経験があることだと思うのですが、桂花のそれは相当根が深い様子でした。理性では過去に「もしも」なんてないと分かっているのに、夢の中で何度もその「もしも」を追体験してうなされてしまう桂花。

もしもう少し早く助けに入れたなら、柢王の身体に魔族が入り込むことを防げたかも知れない。

詮ないことだと理解していても、深い部分で燻っている感情が悪夢に形を変えて桂花を苦しめます。柢王もそれに気付いていますが、根本的なことが解決できないのでどうしようもありません。

ティアとアシュレイのカップルよりこちらのアダルト(?)カップルの方が気になるし心配なので、読んでいてハラハラします。
といっても、分量的にはものすごくエッチメインだったんですけど。
桂花が生活費を稼ぐために作って売りさばいている媚薬をこっそり柢王が買ってきて飲ませてしまうというシチュエーションでの濃いめの一発。
基本的にものすごく包容力のある柢王と、なんだかんだ言っても柢王一筋の桂花のエッチシーンは、恋人同士の語らいと愛情確認に満ちていて、大人の雰囲気満載。

しかし、やっぱり柢王ってば金遣い荒いんだ…。
もらってくる俸禄が、部下への奢りと桂花に身につけさせる小物なんかで全部消えちゃうんだ……しかも金なくなってもツケで買っちゃったりするんだ。

さすが、経済的には苦労知らずの王子様。

家計の敵ですね。


ちゃんと桂花を包み込める柢王の甲斐性も素敵ですけど、
男二人の生活を労働で確保している桂花の甲斐性も相当です。
その商売道具の薬開発に罪人使っちゃうあたりが、あららという感じですが。
まぁ合理的ではありますよね……。
柢王のことだからばれるようなヘマはしないと思いますし。

最近、柢王のダークな部分が意識的に書かれているように感じられます。
公になったら間違いなく非難されるようなことも、柢王は裏でやっているようです。
それは多分、正面からではどうしようもない隠れた国の膿とか、まだ自分ではおおっぴらには国政を動かせないもどかしさとか、そういう思いが彼の中にあるんだろうなと。
彼は王族とはいえ三男坊なのでほぼ確実に王にはなれないわけです。
本人もそれを知っていて、裏から国を支える覚悟のようなものを、かなり子供の頃からしていたのではないかと思います。
そういう自分の暗部を、桂花にだけは見せられるところにも、いかにあの二人の繋がりが深いかを伺わせてくれます。ティアやアシュレイは、親友ではあるけれど、やはり自分の方が年上だという意識が働いて裏の部分は見せないのですね。
とりあえず今は、この二人が一緒にいられる幸せを堪能したいと思います。


『苦海芳魂(くかいほうこん)』

柢王・桂花のカップルとはうってかわって、まだまだ発展途上の恋愛模様を見せてくれるティアとアシュレイのお話。
恋愛感情よりは友情の方が良い(でもキスは気持ちいい)アシュレイと、あぶなっかしいアシュレイと名実共に恋人同士になりたいと切望しているティアの、駆け引きとも言えない初々しいやりとりが微笑ましいのです。

守天ティアのご先祖様(?)の幽霊も華々しくご活躍なさいます。
いやー、皆さんアクの強い方ばかりで……。
つーかぶっちゃけ、

歴代守天様って、みーんな変態ですか?

と、ちょっと遠い目になってしまいました。
これを読むまでは、ご先祖様の中でもパウセル様(アウスレーゼ様と同じ匂いがするので様付け)はまともだと思ってたんですが。
アシュレイに対して、

変態も愉しそうだ。
可愛がるのと苛めるのと、交互に与えてみたい。

なんて笑顔で考えたあたりで思い直しました。
しかもなんだかんだ言いながら、アシュレイのこと味見する気満々でしたし。
実行されていたらティアは発狂寸前まで怒り狂ったことでしょう。

さて、今回は公の場でティアに力をぶつけて謹慎を食らい、天界の蔵書室で働かされることになった相変わらずのアシュレイですが、ご先祖様の彼に対する点はちょっと辛いようです。
特に先代守天ネフロニカは言いたい放題。

普通のサルの脳みその半分だから『小猿』なの?
馬鹿な子って新鮮?

あーあ。
年齢より幼いのは認めますけど、何もここまでこき下ろさなくても。
同じ王族でも柢王との違いには時々唖然とさせられるのは事実ですが。
可愛いので私は好きです。
早く大人になったアシュレイが見たい気はしますけれど。

アウスレーゼ様はちょこっとだけ登場して、おいしいところをかっさらってお帰りになりました。
要領の良い方です。
新キャラのナセル(蔵書室に雇われた司書)も、そのうちアシュレイで頭がいっぱいになったティアに執拗に監視されるようになりそうで目が離せません。
ナセルは、縁あってナセルはアシュレイに助けられていて、密かにアシュレイを慕っているのです。今のところ恋愛にまで入っていない(はず)ですが、目のくらんだティアにはきっとどんな言い訳も通じないことでしょう。先が気になるところです。

結局、男の使い女(なんという矛盾に満ちた字面なんだ)を可決しようとしたり、アシュレイとティアの中を引っかき回したりと思うさま振る舞っておられたご先祖様は、アウスレーゼ様を中に挟んでティアと休戦協定(?)を結びました。
ちょっとの間、彼らに出番はなさそうです。……たぶん、ですが。

ちなみにこの1冊の中で一番笑ったのはこのお話にでてきた守天の「成長痛」。彼は額に御印と呼ばれる紋様が浮かんでいるんですが、それに成長痛があるとでっちあげたのです。
話の流れとしては、
守天は最近、使い女に手を出さない、もしや男に走ったのでは? という噂が流れる→柢王が言い訳として「成長痛」をでっち上げる。しかも信憑性を高めるために自ら、守天に変化しているときに証人を作ったわけです。

曰く、
「上が痛い時は下も痛い。
だから、男性機能不使用の呪文をかけている。
証人は布の上から、こすった使い女。
半刻触れていても、ぴくりともしなかった」
……だそうで。
柢王、ものすごい精神力です。

爆笑。


『琴線杳々(きんせんようよう)』

謹慎中のアシュレイを子供に変化させて塾に連れて行く柢王。ちょっとした、塾で起きている事件を解決するためにアシュレイ・柢王の武将コンビが動きます。

一番軽い感じの作品だったと思います。
とは言っても、桂花は必死で柢王を救うための特殊な力のある石を捜しているのですが。

こういう、武将コンビが精力的に動いて、文官コンビが見守りつつ裏でサポートという構成が王道で大好きです。安心できるというか、しっくり来る形というか。
適材適所でキャラが動くとストーリー全体が安定する気がします。

アシュレイはティアに、柢王と較べるようなことを言われて凹みますが、
そろそろ自分の立場と年齢を自覚して成長を始めても良いんじゃなかろうかと思いました。
まだまだティアと同じ場所に立ってものを見ることはできていないアシュレイです。

ところで、作中にツナサンドが出てきたのでふと思ったんですが。
天界に海ってあるんですかね?
ツナサンドってことは具はシーチキンですよね。
海があるんですね? 
4人で海水浴とか妄想しても良いってコトですよね!?
うわぁ……桂花とティアの水着姿とかちょっと想像できない。
柢王・アシュレイはなんとなく思い浮かびますけれども。
ティアとか泳ぎは苦手そう。
きっとパラソルで影作って、楽しげに泳ぐアシュレイをうれしそーに眺めるんだわ!
桂花は一人で黙々と泳いでてアシュレイをからかって遊ぶのに飽きた柢王に後ろから捕まって沈められたりするんですよ。
ご飯は武将コンビが捕まえた魚とか海を、桂花がその場で調理したりするのです。
……いいなぁ、海。
そろそろ夏だし……。
…………………ここまで考えて、自分の頭が暑さにやられてると思いました。
4人を泳がす前に、私が頭冷やしてきた方が良さそうです。

まぁ、やくたいもない妄想は横においといて、今回のティアとアシュレイのエッチシーンですよ!(衝撃
ティア変態説はもう私の頭にこびりついて消えてくれそうにありません。

いくらなんでも指ってどうなの。

自分で突っ込まずに恋人の指を操って突っ込ますって、

それどーなのーっ!!


……絶叫。

(沖さんのイラストがやたら色っぽかったんですが、そうですよね…この角度になりますよね…………………………………………………………正面からはちょっと描けないですよね……)


最後の最後で、アシュレイがティアにした、

おまえのためならいつだって命をかけられる

という強烈な告白に目眩がしました。
恋人に面と向かってこんなこと言われたら、理性なんて軽く消し飛びます。
なんだかんだいって、ティアは幸せ者です。



……なんか、読んだのと同じくらい時間を掛けて感想書いたような気がしますが、
2倍楽しめたと言うことで無問題。

比翼連理に行くまでのストーリーを増やすと言うことでファンとしては嬉しい限りなのですが、この4人の絆をさーらーにー深く描写されてしまうと、その先のストーリーで受ける衝撃が恐ろしいことになるのではとふと思いました。
ええと、めちゃめちゃ怖いですね、正直なところ……。
でも先が知りたいことには変わりなく、どうせまた泣かされることにも間違いないのです。

……次の新刊はいつかなぁ……。
↑鬼?

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