4344805682恋情のキズあと
きたざわ 尋子 佐々 成美

幻冬舎コミックス 2005-05-17
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ボーイズラブ・レビュー



ええ、ボーイズラブや青年向けエロ漫画で業績をUPさせた幻冬舎が、その勢いに任せて創刊したルチル文庫ですが、とりあえず流行に乗って1冊購入してみました。

全冊購入すると特典として小冊子プレゼント企画ってのがあったんですが、さすがにそれはちょっとなー、ということで、1冊だけチョイスしたのです。

裏にあるあらすじをざっと見て一番好みかな……と思ったのが、
この恋情のキズあとでした。


ルチル文庫の装丁は、シンプル且つ上品控え目で大変気に入りました。
フツーにレジまで持っていけます。


以下ネタバレ妄想注意!





とりあえず紹介文いきます。


休暇を過ごすため、別荘へと向かっていた大企業の後継者・谷城貴臣は、記憶消失の少年・唯を拾い、ふたりきりで過ごすことに。
その夜、夢遊病のように貴臣のベッドに近付いた唯は、服を脱ぎ捨て、貴臣に抱きつきキスを。
しかし唯は翌日何も覚えていなかった。
そして次の夜もまた……。
危険を感じながらも激しく唯に惹かれていく貴臣だったが……。



ということなんですが、まず、私がググっと刺激されたツボはですね。
「大企業の後継者」
「記憶喪失の少年」
「もしかして誘い受?」


という3点でした。
まぁ3つ目は、暗示を掛けられての行為だったのでハズレでしたね。
(あらすじよく読めよ私、覚えてなかったって言ってるじゃん)


しかしこの作品。
はっきり言って決定的な構成ミスですよ。
プロットの段階でなんでリテイク入らなかったのか、むしろそっちの方が疑問です。

まず、敵方から送り込まれた記憶消失少年と、人間不信バリバリの攻様が次第に惹かれあって恋に落ちるってのをやりたかったのなら、もっと二人の心理描写を丁寧にするべきだったし、後半の展開はむしろ蛇足でしょう。
唯の、敵から送り込まれたと言う立場と、貴臣を好きになっていく自分の気持ちとの葛藤も甘いし、貴臣の人間不信ぶりも説明的で実感があまり湧かないのです。

で、私としては後半のストーリーをもっとふくらませて欲しかった。
祖父に逆らって唯のためにグループ乗っ取りをたくらむ貴臣とその仲間達の戦いですね。
だって後半の方が話しが盛り上がりそうだし、唯との恋愛は戦いながらでもできるし、貴臣の祖父とのしがらみをなんとかしたいという必死さを醸し出すためにも好都合な筋書きです。
ついでに言うと、後半出てきた女性キャラとボディーガードの方が、主役の貴臣よりずっと魅力的だったのです。
あらら……。
ちょっとこれはボーイズラブとしては致命的です。

この分量でちゃんと読ませようと思ったら、何らかの工夫が必要でしょう。

もう前半の美形少年拾って別荘で云々はサクッと書き流して、「敵からアクションがあった」と言うのをきっかけに貴臣はグループ乗っ取り作戦決行を決意、唯は証人として自分の手元にとどめ置き、祖父との戦いの中で次第に惹かれあっていく。つまり、出会ってから両想いになるまでの前半と会社乗っ取りの後半を同時進行にした方が、スピード感も出るし、後半のキャラも過不足なく書けるんじゃないかと思うのです。


あともうひとつ気になったのが、この作家さんのキャラ描写です。
一事が万事、説明的すぎるのですよ。
どのくらい貴臣が人間不信で、一番の側近との信頼関係もないとか、過去のトラウマだとか、説明文ですませるんじゃなくて、ちゃんとキャラを喋らせてその中で、人間不信なり乾いた人間関係なりを表現して欲しかった。
そうでないと、説得力に乏しいのですよ……。
すんなり小説の世界観に入っていけない。
結局この谷城グループがどれくらい大きな企業なのかもぴんと来なかったですし。

美味しい設定を並べてみたけど、ちょっとばかし調味料が足りなくて火加減を間違えて素材の味が消し飛びました。というなんとも無念な1冊でした……。

これなー……絶対、プロット段階で担当さんが一言二言アドバイスしてりゃ、もっと良くできたはずの作品ですよ嗚呼もったいない。


次回に期待です。



次の配本にはひちわゆかさんのお願いダーリンが入っているので楽しみ。
その昔ビブロスから出てたやつの焼き直しでしょうが、当時Yに借りて読んでいたため手元にないので、必ず購入します。
しかし、リメイクが多いですね、ルチル文庫……。
無精せずに新人発掘にも力を入れて欲しいものです。
自分の文庫から発掘した作家は財産ですよ~。

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