4044375011春いちばん
湊川 理絵

角川書店 1999-05
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ボーイズラブ・レビュー



「花は、どうして咲くのだろうね?」

泣けます。
友人は、目を腫らして私にこれを勧めてくれました。
……私は泣きませんでしたが。
かなり切ない話です。
この後まだ2冊、
秋色の女神―春ちゃんシリーズ クリスマス・ラブ―春ちゃんシリーズ

が出ているんですが、残念ながらどっちも品切れみたいです……。
古本屋さんとかで探してみて下さい。
とりあえず古本屋さんの検索リンクページも貼っておきます。
何冊買っても送料280円だそうです。
古本で探す


以下ネタバレ妄想注意!

紹介はこんな感じでした。

誘い込むような絹の肌に童顔の美青年、雛瀬春実。
実は彼は名門K大学理学部・天童研究室の助手だった。
昼は白衣をまとい研究にいそしむが、
夜はただ欲求を鎮めるために淫らな肌が男を求めてしまう。
そんな彼に同じ研究室の鏡沢俊一郎は本当の恋を教えてくれた。
「俺はあんたが好きや。あんたと一緒に生きて、
あんたと一緒に死にたいくらい好きなんや」
姿を消した鏡沢に伝え切れなかった言葉。
春実は身代わりに親友の裕介の胸を叩く…。
温かく、少し切ないラブ・ストーリー。


設定自体は、ベタといえるでしょう。
春ちゃんの家系は、京都の遊女の呪いだかなんかで、
女が生まれると男狂いになる、みたいな家で、
だから春ちゃんが男でみんな安心していたところ、
男なのに男狂っちゃった!
という。

もう、男なしじゃいられない!
H大好き。
という状態で、とても相手を一人に絞るなんて、できなかったわけです。

ところが、紹介にも出てくる鏡沢俊一郎だけは違いました。
春ちゃんは、彼を相手に一生一度の大恋愛をします。
彼がいる間は、他の男が欲しいと思わなかった。
彼だけで満足できた。

なのに、彼は春ちゃんを残して病気で逝ってしまいます。

ホント、それだけのストーリーの小説なのに、
ジンとくるんです。
本気で悲しいです。
これが男と女なら、使い古された話だな、で終わりそうなものですが、
ボーイズラブならではと言いますか。
悲しかった。

唯一を失う喪失感が、伝わってくるんでしょうね。

残りの2冊は、その春ちゃんの喪失感を引き立たせます。
色々な男と肌を合わせるけど、やっぱり彼のかわりには、誰もなり得ない。

春ちゃんは、花はどのようにして咲くのかという研究をしているんですが、
それがまた、ストーリーに絶妙に絡んでくる。

死ぬ前に春ちゃんに、彼は語りかけるのです。
「死ぬのなら、春がいい。最後まで、つきとめられなかった花々の開花の秘密を、
春に逝く私を哀れんで、花が教えてくれるかもしれないね――」
「いつか、花の秘密を、この世に残してきたきみに、
教えてやることが出来るかも知れないとね。
君を導いて、君を守る。そんな力を、私が持つことが出来れば良いんだが」

切ないんですね、これが。

あと、春ちゃんの親友の祐介も、いいです。
恋人じゃなくて友人。
ときどき現実世界でも、男連中の間には私たち女には理解できないほどの、
熱烈な友情があるような気がします。特に体育会系の人々とか。
あの団結力は、いったいどこから湧いてでてくるんでしょうかね?
得点決めるたびに抱き合うサッカー選手とか、萌え萌えで見てますが……
それのしっとりバージョンといいますか。
影から春ちゃんを励まして支える存在が、すごく良かった。

良い小説を読みました。
角川出版さん、再販してくれないかなぁ……。
私は手元に持ってますが。

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